今、クラウドファンディングがPRに有効な手段として注目を集めていることをご存知でしょうか。
今回、お話を伺った大村和彦さんは、日本最大級のクラウドファンディングプラットフォームを運営するCAMPFIREの公式キュレーター。
手がけられた案件は2018年の1年間で約100件、総支援額は9750万円という実績をお持ちの大村さんに「クラウドファンディングを活用したPR」についてPRライターの小林遼香が取材しました。
PRはファンになってもらうためのコミュニケーション
───大村さんはPRについてどのようなお考えをお持ちでしょうか。
大村和彦(以下、大村):私は「PRはファンづくり」だと考えています。PRをすることで、相手に商品やサービスとの共通点を見つけてもらうことができる。さらに、知ってもらうだけではなく、親近感をもってもらい、好きになってもらうことが大切です。
そうしてお客さまと信頼関係をつくって、企業や個人のファンになってもらうことが、ビジネスを長期的に継続させるポイントだと思っています。
クラウドファンディングはファンづくりに向いている手法なんです。
クラウドファンディングをすると、マスメディアに取り上げられやすいということもありますし、SNSとの相性もいい。だからこそ、企業にしろ、個人でサービスや商品を持つ方にしろ、PRの一環として取り入れてほしいですね。
───どのようにすればファンづくりをしていけるのでしょうか。
大村:まずは、その企業や個人ならではの魅力を、ターゲットに共感してもらえるかたちで発信することです。
たとえば、私がお店のクラウドファンディングをサポートするときの例でいうと、お店の方たちが考える1番の“売り”と、お客様が考えるそのお店の良さは違うことがよくあります。
そこで、常連のお客様に「何が決め手で来店しているのか」アンケートをとります。その結果をもとにお店の魅力を再発見してもらうんです。
このように商品やサービスを届けたい人に共感してもらえるキーワードを探して伝えることから、ファンづくりは始まります。そうして共感してくれた人がファンとなれば、情報の拡散などに協力してくれる。
それが知人などに広がり、共感してもらえればまたファンが増える……というように、ファンをますます増やすことができます。PRやクラウドファンディングという言葉を聞くと、最先端のことのように思えますが、結局はこのように、いかに基本に立ち返ってお客さまの声を聴くかがとても大切なんです。
メディア露出に効果抜群。クラウドファンディングがPRに活用できるワケ
───クラウドファンディングはPRになぜ活かせるのでしょうか。
大村:クラウドファンディングは、プロジェクトに共感してくれた人が口コミでその情報を広めていく傾向が強いものです。信頼していなければ、人に伝えたりはしませんよね。
つまり、クラウドファンディングは支援というかたちで信頼が可視化されるツールともいえるのです。信頼を可視化するというのは、まさにPRの領域ですよね。
また、メディアに取り上げられやすいというのも大きな理由です。メディアもまた、信頼できる情報を取り上げたいと探しているため、クラウドファンディングに注目しているんですね。だから、支援の多いクラウドファンディングはメディアに取り上げてもらいやすくなるわけです。
さらに、プロジェクトページは支援期間が終了しても残ることが多く、インターネットの検索結果上に残りやすいというのも強みです。それが、数か月後〜数年後の取材依頼につながることもあります。
───クラウドファンディングで効果を上げるための工夫を教えてください。
大村:クラウドファンディングを実施する前にファンがいる状態をつくるために、Facebookグループを使ったコミュニティづくりをよく行います。
先にファンをつくっておくことでクラウドファンディング開始から素早く目標達成をすることができます。また、キックオフイベントを開催し、イベントを通じて取材依頼がきやすくすることもあります。
コミュニティは、クラウドファンディングの実施中だけでなく、実施後も活用します。コミュニティメンバーで新しい企画づくりなどをすることで、関係性を強化できるんですね。
こういったSNS活用は欠かせません。クラウドファンディングはプラットフォームがWebなので、SNSからクラウドファンディングのページへ飛んでもらうための工夫が、目標達成の可否に大きく関わります。
クラウドファンディングをしようと考えていて、まだSNSを活用していない企業には、まず始めることをおすすめします。
信用が可視化されるクラウドファンディングは、これからのPRの主流に!?
───PRの観点から今後クラウドファンディングに何が期待できるでしょうか。
大村:今後、クラウドファンディングはますますPRに適したものになっていきます。
日本は、アメリカと比較するとまだクラウドファンディング市場の規模が小さく認知度も低い状態です。それでも市場全体の売上は毎年、倍に上がっているので、2〜3年後には売上や件数ももっと増えていると思います。
現在は全国で月700~800件のプロジェクトがスタートしていますが、これが毎月3000~5000件になると予想されています。
件数が増えて認知度が上がれば、ますますクラウドファンディングへの取材も増えていくはずですし、メディアから取材を受けることでまたファンも増えることが期待されます。
クラウドファンディングは、PRの手段としてもっと主流になるのではないのでしょうか。
───これからPRに取り組みたい方へのメッセージをお願いします。
大村:ここまでお話しした通り、クラウドファンディングは、PR・マーケティングにとても有効なツールです。初期費用や成功報酬を必要としないので初心者でも始めやすいのも特長といえます。
また、クラウドファンディングを実施することで創業理念を思い出すきっかけができ、今までのPR方法を見直すようになった企業も多くあります。
商品のターゲットと軸がずれてしまっている企業に、事業をはじめた理由などを思い出して、改めて軸を定めてもらうことで、継続的なファンづくりに活かすことができるんです。
これだけPRに活用できるクラウドファンディングを使わないのはもったいないと感じます。ぜひチャレンジしてください。
インタビューを終えて
インタビューを担当した小林遼香です。取材を通して、クラウドファンディングは、ファンと近い距離感で深い関係性をつくれる有効なツールなのだと勉強になりました。
企業理念の想起などの「きっかけ」を与えてくれるというお話も印象的でした。自社のファンの動向を知りたい、ファンをもっと増やしたいというPR・広報担当者の方は選択肢の1つとして活用してみるとよいかもしれません。
クラウドファンディングのサポーターを始める以前から、10年以上にわたって人のご紹介という縁を絶やすことなくつないでこられ、お仕事をされているという大村さん。
仕事をされる方々と信頼関係を構築されていて、まさにPRの基本を体現されていると感じます。その大村さんの発する言葉だからこそ、1つひとつが胸に響きました。
(取材・執筆:PRライター 小林遼香 / 編集:PRライター 山口真依)