長くフリーランスをやっていると、自分から積極的に仕事を獲りにいくよりも、既存のクライアントさんのご紹介とか、問い合わせなどで仕事が決まることが増えてきます。それもあって長く実績を整理していなかったのですが、少し前に必要にかられて実績をまとめることに。
過去にまとめたものをアップデートする形で整理。
実績に書くような上手くいった経験というのは、読み返していて少し懐かしさに浸る時間はあったものの、そこで止まっているようです。そういうこともあったな程度で、時間の経過とともに思い入れも薄れているような気さえしました。
一方で、上手くいかなかった苦い経験は、思い出そうとしなくても、湯水のように湧き出てきます。
今こういう手順をとって仕事をしているのも、こういう点に気を付けるようになったのも、苦い経験があったから。何年経っても迷惑をおかけした方々の表情が思い浮かび、正直目をそむけたくなりますが、これこそが財産だなと思います。
相手に対して踏み込むことも必要だと思わせてくれた経験
私は自分が関係している仕事に対して、意見を伝えたり、何かを提案したりというのは、あまり苦もなくできるのですが、相手に対して踏み込むのは苦手です。
以前、ある女性社長のパーソナルマネージャーを務めていたことがあります。芸能事務所にも所属し、彼女がいて初めて成り立つ会社でした。
私はというと、基本はお願いされたことをやるという役割。スケジュール調整など秘書的なことから、外部に依頼している仕事の進行管理や納品確認までやっていました。
経緯も分からないことを突然振られても困るな……と正直思った日もあります。でも自分で何でもやりたい社長に対して、踏み込み過ぎると、気分を害されるのではないかと思い、経緯を含めた詳細を聞けずにいました。
それが社長にとっては良かったのか悪かったのかは分かりませんが、徐々に信頼関係が作れ、弱気な面も見せてくれるように。長く心臓の薬などを服薬されており、体調が優れないこともあったのでしょう。「会社員になりたい」とこぼすこともありました。
それであまりにも顔色が悪かったこともあり、「無理をせずに、少し休まれたら」と声を掛けたのですが、そのときに「私は社長だから休めないのよ」と。
確かに彼女がいないと、この会社は成り立たないのです。コンサルティングも講演活動も、大学の講義も、誰も代われない……。
でも社長に仕事が一極集中していた点をもう少し変えられていたら、元気なときに気になったことは遠慮せずに積極的に聞いていたら……、私ができることはもっとあったはずだとも思います。
社長は表向きはこう言っているけど、内情は違うのではないかなと思うことも多々ありましたが、それも敢えて気付かないふりをしていました。
言われたことだけやっていれば、波風を立てずに社長と良い関係が続いていくと思っていたのです。
今は亡き社長ですから、何を望んでいたのかは分かりませんが、私が仕事で最も後悔している出来事です。
それ以来、「聞かないと分からない」と意識的に割り切って、踏み込んでほしくなければ話さなくていいと伝えつつ、聞くように心掛けています。
休める環境作りが大事だと気付いた経験
複数のスタッフで雑誌の連載を担当していた頃の話です。
1歳の長女の風邪が治らず、入院することに。私は翌日までに構成を出さなくてはいけない状況で、でも小さな子どもの入院には付き添いが必須。子どもの機嫌は悪いし、病室にPCを持ち込んで仕事ができる状況でもなく、仕事仲間に相談し構成出しを変わってもらったことがありました。
当時は子どもを理由に仕事で迷惑をかけたくないと考えていましたし、この相談をしたら仕事を失うかもしれないなと不安も大きかったです。結局、良い方々に恵まれて、事なきを得たのですが、この経験から、何かあったら誰かに代わってもらえる状況を意識して作ることが大切だと学びました。
チームで動く仕事の場合は、自分が休んでも仕事の状況を分かるように共有しておき、マニュアル類はその都度、最新の状態に更新。「代われる仕事」「誰にでもできる仕事」になるように心掛けています。
休めない状況を作るのではなく、休めるようにするにはどうしたらいいかと発想を変えられたのは、大事な仕事と子どもの入院という天秤には掛けられない出来事があったからだと思います。
ここではボリュームの都合もあり経験は割愛しますが、ミスが起きない体制ではなく、ミスが起きても大きな問題にならない体制作りを意識するようになったのも、過去の苦い経験があるからです。
苦い経験は心に痛みとして残ります。同じ過ちはしたくない。
そういう想いが今の自分を支えているのでしょうね。