CDの作り手と聴き手の間

クラシック音楽コンサートでの服装。そしてフライングブラボーについて。

クラシック音楽のコンサートというと、何を着ていけばいいのでしょうと不安に思われる方が多いようです。

オーケストラ団員も指揮者も正装して、女性のソリストはドレスだと思うと、それだけで敷居が高いですね。

クラシック音楽の服装と会場で問題になるマナーについて、今日はお話したいと思います。

 

 

まず演奏会に何を着ていけばいいのか

結論から言うと、基本的には特に決まりはありません。

年末年始の特別公演やオペラのガラコンサートなどで、ドレスコードが指定されている場合もありますが、そもそもそういう時はチケット購入の際に必ずインフォメーションがあります。

そうでなければ、ちょっとお出かけです、という感じの服装で大丈夫。オーケストラの定期公演などは、平日の夜という日程も多く、会社帰りにコンサートに行くかたも多いのです。

男性ならスーツ、ネクタイを外していてもオーケー。女性もオフィスカジュアルのままコンサートへ行っても問題ありません。まずは気軽に出かけてみてください。

 

そのジャラジャラに気をつけて

オフィスカジュアルでも、ちょっとシックなワンピースでも、そこは一緒に行く人に合わせたおしゃれを楽しむのが得意な女性。

そんな女性でも見落としがちな、気をつけてほしいポイントがあります。

それは、アクセサリーの重ね付けです。

金属製の大きいバングルや、長めのブレスレット多重巻、そして時計には十分注意してください。

演奏中にちょっと座り直しをしたり、髪をかきあげるだけで「ジャラジャラ」音がします。

普段は気がつきにくいような音でも、クラシックの演奏中は思った以上に響いてしまいます。

同じような音で、ショルダーバッグのチェーンストラップにも気をつけて。膝からストラップが滑り落ちるたびにジャラ!です。

音が出そうなアクセサリーは事前に外す。チェーンストラップはバッグの中に入れておくことをオススメします。

 

そのガシャガシャにも気をつけて

服装よりもっと気をつけてほしいこと。それはは持ち物です。

女性に多いのですが、折りたたみ傘をレジ袋に入れて、大きめのサブバッグに入れている方!

そしてさらに、そのサブバッグから、飴ちゃんを出す方!

レジ袋の擦れる音と飴ちゃんの袋を破る音は、ホール全体に広がってしまいます。それに、演奏中の飲食禁止には、飴ちゃんも含まれています。

私も咳が出そうだなと思う場合には、タブレット型のトローチなどを演奏前に食べるようにしています。

買い物帰りなど荷物が多い時は、クロークをうまく利用して、座席に持ち込む荷物を減らすと快適です。

 

クラシック音楽を味わうホールは、生の楽器の繊細さを細部まで味わえるよう、音が効果的に響くように考慮されて設計されています。

だからこそ、こうした小さな何気ない音でも増幅されてしまうのです。

小さな小さな楽器の音、遠くまでかすかに響く残響。それら全てを大事にできる場所でもあります。

自分の不注意で、そんな場所に要らない音を響かせないように、音楽を大事にしたいものです。

 

本当に気がついてほしい人に、注意事項が届かない

インターネットの記事は、自分が読みたい内容、見たいものにしかアクセスしないという狭窄の場所です。

だからこそ、これから初めてクラシックのコンサートに行く方にリーチできるような内容と、そしてさらに、その少し先にぶつかるであろうと思われる事象にも、次にここで触れておきたいと思います。

それは、フライングブラボーの問題です。

曲の演奏が全て終わり、指揮者の手がまだ下りていない状況で、そしてまだ最後の音の残響がホールに静〜〜かに響いているとき・・・・

ぶらぼおおおおおおおおおおお!と、叫ぶ人がいるのです。早いよ!まだだよ!音が消されちゃったよ!

これがフライングブラボー問題です。

さらにはまだ演奏が終わっていない箇所で、ブラボーしちゃう場合もあったり。

単純に終わりを間違っているだけならまだしも、どうもその叫ぶ行為自体を楽しんでいるようなフシもあり、最近では演奏前に注意アナウンスがされるようになってきました。

しかし本当にその注意事項を届けたい方には、どうも届いていないようなのです。

インターネットも、現実社会も、注意事項アナウンスの難しさは同じなのかもしれません。

 

フライングブラボーさんへ

大声でブラボーしたいくらい素晴らしい演奏が気分を高めたかもしれませんが、どうかもう少しだけ、自分以外の人の余韻に配慮してくださいませんでしょうか?

残響の最後の最後まで、シートに深く腰掛けて、息を殺して味わっている2000人の気分を、あなた一人で全部ぶち壊しです。

アクセサリーのジャラジャラより、もっともっとひどい話なのだと、どうかわかってください。

あなたの感動や興奮は、十分よくわかります。いや、ほんとによかったですよね。今日の演奏。

だから、そんなせっかちにブラボー言わなくても、オケも指揮者もちゃんとわかってくださいます。

感動して、声も拍手も出ず、音楽に入り込んでいて、会場の全員がその静寂の中にいる瞬間。それこそが音楽家への最高の賛美じゃないでしょうか?

わかります、わかりますよ。この感動を誰よりも早く、大きな声で伝えたいんですよね。

もっと自由に、拍手やブラボーをしまくりたいですよね。ええ。わかります。私もそう思うこともあります。

時に素晴らしい演奏に出会い、楽章の合間、ソロの後などでも観客のため息に似た感嘆の声や、拍手が起こることがってあります。ええ、そういうことを言っているわけではないのです。

そういう会場一致の音楽への共感があれば、声をあげたところで問題になることはないんです。

あなただけの自己満足のような叫び。それに迷惑している人がいる。どうかそのことに気がついてもらえませんでしょうか?

 

感情に任せて泣いたり、笑ったり、拍手をしたり。そんな自由な音楽鑑賞が私も好きです。

でもあなたの自由が、その他の人の迷惑、ひいてはそんなお客様を大事にしているオケの迷惑になっているとしたら、あなたは自分の大事なオケの邪魔者になってしまっているということでもあるかもしれません。

今日のあなたは、自由な観客の一人ではありますが、この演奏会の一部でもあるわけです。

だからこそ、みなさん服装に気を遣ったり、持ち物を悩んだりするわけです。

どうかお願いです。拍手もブラボーも、もう少し後のお楽しみに取っておいていただけませんでしょうか?

みんなが好き勝手に拍手したり、声をあげたりできる、そんなほうがいいと思う人なら、そういうコンサートに行くのもいいですよね。

 

クラシック音楽は厳格なマナーのばかりなのか

うるさいマナーやルールばかり聞かされて、ますますクラシック音楽の敷居を高くしているのではという意見も多く聞かれます。

でも、どうか誤解しないでください。これは難しい話でも何でもないのです。

みんなが隣に座った人に心を配る。音楽を一緒に楽しむ。場の慣習に従う。

これだけなのです。

これは何も、クラシック音楽の世界だけではないでしょう。

公共の場で、自分の意見だけを通さないこと。

ただそれだけなのですから。

 

何はともあれ、これまでクラシック音楽のコンサートへ行ったことのない方も、ぜひ一度聴きに行ってください。

きっと新しい扉が開きます。

ブラボーと言いたくなったら、満場の拍手が始まってからどうぞ!

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渋谷ゆう子

作曲家・渋谷牧人のレーベル「Nomius Nomos」マネージングディレクター。アルバム制作や演奏会企画運営を手がける。プロアマを問わず演奏家とのつながりが深く、自主制作アルバムの支援も行っている。ワルター/ウィーンフィル/マーラー9番/1938年がお気に入り。3児の母。

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