酒と泪と女と女

「自意識を捨て自分で選ぶ」二人の距離を掴む技術は、恋愛の基礎でありハンティングの初歩である。 アルテイシア×川崎貴子対談(第4回)

オクテ女子のための恋愛基礎講座』を上梓された人気恋愛作家・コラムニストのアルテイシアさんと、昨年『結婚したい女子のための ハンティング・レッスン』を出版した女のプロ川崎貴子の初対談。全4回に分けてお送りする対談の第4回は、女性の自意識と男女の距離感についてです。選ばれたいという自意識から、自分で選ぶという意志への転換について語られます。

アルテイシア
神戸生まれ。大学卒業後、広告会社に勤務。現在の夫であるオタク格闘家との出会いから結婚までを綴った『59番目のプロポーズ』で作家デビュー。著書に『恋愛格闘家』『もろだしガールズトーク』『官能女子養成講座』『オクテ男子のための恋愛ゼミナール』など多数。

川崎貴子
株式会社ジョヤンテ代表取締役。ninoyaブログにて「酒と泪と女と女」を連載。婚活結社「魔女のサバト」主宰。著書に『愛は技術』『結婚したい女子のための ハンティング・レッスン』『私たちが仕事をやめてはいけない57の理由』ほか。

 

 

アルテイシア(以下、アル):ご本で「すご~い」は禁句にしましょうと書いていらっしゃいましたけど、確かにそういう合コンさしすせそ的なもので撒き餌をしても、雑魚しか釣れないんですよね。そこに時間やパワーをかけてる暇はないじゃないですか。

 

川崎貴子(以下、川崎):そんなに女性の一生は長くないんで。もったいないですよね。

 

アル:そうなんです。

 

川崎:アルテイシアさんは最終的にどんな条件で旦那様を選ばれたんですか?

 

アル:私が条件で譲れないのが「心身共にタフであること」。あとは「独自の価値観で面白いこと」と、「自分より弱い立場のものに対して優しいこと」でした。

 

それ以外はどうでもいいというか……例えば、デートに全身迷彩服で来られて、ショック死しそうになったんですよ(笑)。今でも、私がネットでワンピースを見ていて「ベージュにしようかな?」と夫に言ったら、「ベージュというのはネズミ色か?」って言われて。「肌色だ!!」みたいな。

 

でも私の飼ってた猫の介護を一緒にしてくれたりして、やっぱりそうしたときすごく愛が深まっていく。二人の絆も深まりますよね。

 

川崎:それは深まりますね。

 

アル:独身の若いときって、オシャレな人が好きだったんですよ。センスのない人に選ばれたら自分もセンスないみたいじゃないですか。

 

でもそういうことって、本当はいらなかったんだなって。だから、男を育てようと。磨けば光る原石をブルーオーシャンから見つけ出して……服装とかっていうのはいくらでも変えられますからね。

 

川崎:その方が面白いですよね。

 

アル:その面白さに目覚めてほしい。あと私、パートナーには弱い部分を見せたいけど、自分より弱い男ばっかりだったんですよね、周りが。

 

自分より弱い男には弱い部分を見せられないじゃないですか。夫は格闘家っていうのもありますけど、心身ともにタフだし、一緒にいてすごく安心感があるんですよ。

 

先日、夜中にインターホンが鳴って、そのとき夫がパッって台所に行ったんですね。それで包丁を逆手に持って「接近戦か!?」って。「待て待て待て待て!」みたいな(笑)。

 

結局、インターホンの誤作動だったんですけど、それくらいの人の方が私は安心なんですよ。悪漢がやってきたときに逆手で退治してくれると思うので。

 

川崎:あぁ、お会いしたい、面白い。

 

アル:肉体はマッチョだけど、精神的には全然マッチョじゃないのも重要でした。

 

川崎:それこそ真のマッチョじゃないですか。マッチョというか、真の男らしさじゃないですか。

 

アル:そうですね。「漢と書いて男と読む!」みたいな。うちは共稼ぎで、家事も分担してますけど、結婚当初は「ごはんは私がちゃんと作らないと」って思ってたんです。

 

でも、夫が100回くらい「俺のごはんのことなんて気にしなくていい」って言ってくれたんですよ。「キミは自分の仕事を優先すればいいから」って。

 

最初の20回、30回くらいは信じられなかったんですよね。そうは言いつつも心の中ではやっぱり嫌なんじゃないかな、とか。でも、繰り返し心の底から言ってくれて、本当にいいんだということがわかったので。ありがたいですね。

 

川崎:素敵ですね。

 

アル:恋愛っていう面で見ると、お店に詳しかったり、素敵なお店でエスコートしてくれるような人にキュンとくるかもしれないけど、夫にするにはグルメじゃない人のほうがラクですよね。

 

川崎:ラク~(笑)。

 

アル:うちの夫は何を作っても丸飲みするんですよ。レストランとかに行っても丸飲みするんで、それはイラッとするんですけど(笑)。でも家でいるぶんには「三日カレーでも平気」みたいな人がはやりやすいんですよね。

 

川崎:ありがたいですよね。自分が主導権を持って男性にリードを求めず、気になるところは育てようって思うにはどうしたらいいんでしょうね?

 

アル:受け身だと厳しいですよね。今は男の子も受け身だから、受け身の男女が出会っても恋にならない。だからプリンセスよりもソルジャータイプが幸せをつかみますよね。

 

「馬引けー!」みたいなソルジャーになれなくても、小さなことでもいいんですよ。とりあえずご飯に誘うとか、そこでちょっとだけ相手にタッチするとか。新刊で「ムツゴロウタッチ」と「ツンデレタッチ」を勧めてますけど、効果は絶大ですから。

 

そういう、できることをまずやってみることだと思います。そんな大層なことじゃないよっていう。ファッションだってそうですよね。女性経営者の人って中身は戦国武将だけど、女のコスプレをしてる、みたいな人が多いじゃないですか。

 

川崎:ええ。さあ、今日も女装しよう!と思って毎朝出陣してますね。

 

4

 

アル:そうそう(笑)。女装すればいいと思うんですよ。見た目さえワンピースとか着て女らしくしとけば、 毒とか吐いたりキツイことを言っても、「意外とサバサバしてるんだ」みたいに、いい風に受け取ってくれるので。それはすごく便利なことだと思うんですよ。

 

川崎:全然そんな、ね。自分にこだわったり、こう見られたら……とか考えないで、ちゃんと擬態したほうがいいと思うんですよね。そんなに男性複雑にできてないですからね。

 

アル:極めて単純ですからね。その単純システムを利用したらいいですよね。

 

川崎:したほうがいいですね。

 

アル:私たちが男にチン○をポロっと出されても全然キュンとしないけど(笑)、男は胸チラだけでもキュンとして意識したりするじゃないですか。なんて単純なんだ!羨ましいぞ!みたいな(笑)。

 

そういうと「私はそんなキャラじゃない」とか自意識との戦いがあると思うんですけど。

 

でも、今自意識を克服することによって、未来があるわけですよね。現在の自分の選択の結果として未来ができるので、自分が今「でも私そういうの嫌だわ」って自意識に捕らわれて、そのままパートナーに出会えない未来でいいのか?って考えてほしいです。

 

川崎:試しにやってみるってすごい大事ですよね。まず、こんな態度の男性がいた。それに対してこういう格好をしていったら、顔色がどういう風に変わったかとか。まずは実験だと思ってやってみるといいですよね。そういう自分のキャラが変わることに抵抗があるんだとしたら。

 

アル:本当にコスプレというか、女装感覚で。ちょっとオシャレをすることで、ブス扱いされなくなって、自分がのびのび振る舞えるようになるとか。ついでにちょっとタッチとかもしてみたら、如実に男子の対応が変わって、やってみたら意外と面白いじゃんっていう。

 

川崎:そうですよね。何事も食わず嫌いはもったいないですよね。

 

アル:どうしても恋愛ってロマンチックなものと思いたがりがちですが……。

 

川崎:違うんだよ、と。

 

アル:仕事に打ち込んでいるキャリア女子ほど、男子との飲みとかの場でも、仕事の話ばっかりしちゃう子って多いですよ。でもそれ逆の立場で考えたら、男が仕事の話ばっかりしてきたら、絶対恋愛っぽいムードにならないですよね。

 

川崎:そのトークはなんのため!?みたいなね(笑)。朝生か!という勢いで激論したりしてるんで。

 

アル:私もやってたんで、気持ちはわかりますけど。私も王道モテ系じゃない自分がコンプレックスだからこそ、こんな自分をわかってほしいと思っていました。あと、自分より下の女を求める男に対する反感からだと思いますね。

 

川崎:そういうのもね、微妙に混ざっちゃうから余計ね。恋愛だけならまだしも結婚となると、親が安心してくれる相手とか、社会的にいいなぁって思われる相手とかって視点が入ってきちゃうじゃないですか。だから上昇婚、自分より全部上の人を選ぶべきって思い込んでしまう人もすごく多いですね

 

アル:他人軸っていう、両親や友達がどう思うかを基準にしてしまう子はいますね。

 

川崎:それは絶対幸せにならないじゃないですか。その誰だか分からない他人が結婚するわけじゃないし。それに自分が仕事を頑張っている人ほど、上昇婚の相手って物理的にいなくなるわけですよね。年収が高くなればなるほど、自分より上の年収で、独身で、男性としての経験値も……っていうと年下も除外されるわけですよね。自ら結婚できないように自分を型にはめてしまっているのです。

 

アル:そういう人は、やっぱりまず婚活をしてみて欲しいですね。私の相談者に多いんですが、最初は年収高めの人と会う。そうすると本当にロクでもないって気付くんです。「お金を払って婚活しないと結婚できない高収入男性には、やはり問題のある人が多い」と。

 

川崎:私の元にも愕然とするエピソードが届きますね。目を見ながら話せる人の少なさとか、会話のキャッチボールのできる人の少なさとか。

 

アル:私はオクテ男子に向けての本も書いてるんで、そういう読者がすごく多いんですよ。やっぱり人の目を見て喋れなかったりとか、女の子の前でテンパっちゃって挙動不審になっちゃうとか。

 

川崎:それとは対極に、自分はイケてると思い込んでるんだけどモテてない男性たち。ちょっとお金持ってたりする男性たちは、ずーっと自分の知ってる話をするじゃないですか。ワインがどうのとか、自分の仕事がどれだけ凄いかとか。延々と続く俺様語り。

 

会話のキャッチボールを普通にできる男性がそもそも希少という、由々しき事態だなと思っています。

 

アル:本当にそうだと思います。だからやっぱり、原石ですよね。そもそも女性を楽しませられるような会話ができる男はとっくに売れてるので。あるいは既婚者であったり、ヤリチンであったり。

 

だから口下手でも、こっちが引き出してあげたら面白い話が出てくる人を発掘しようと。あとは会話のキャッチボールをする姿勢があるか。こちらに対して興味を持っていることが姿勢に出ているのであれば、育てていけると思うんですよ。

 

川崎:そうした目線があると男性の見方がずいぶんと変わりますね。

 

アル:あとは会話を引き出すのに自虐トークをしないこと(笑)。新刊に「ブストークとミラクルワード」について書きましたが、「若く見えますね」と言われたら「いやいや最近白髪が生えてきて!」など余計な情報を与えて「実は股の方にも白いものが」とろくでもない暴露をするとか。

 

どうしてもオクテ女子は自虐方向にいってしまう。これもサービス精神なんですけど。

 

川崎:男性も女性もなんだけど、うまく成就しない人たちって距離感が測れないんですね。相手に対しての距離感と、自分に対しての距離感。今ここでこうあるべきっていう距離感がおかしい。踏み込み過ぎたり、浅すぎたり。もったいないなぁっていうケースがすごく多いです。

 

アル:例えばオクテ女子がおごられそうになると、「いやいやいいです、払います!」と全力で断ったりする。そうするとやっぱり距離が近づかないんですよ。

 

そこまで恐縮されちゃうと、男の子の方も次誘ったら悪いかなと思ってしまうし。せっかく楽しい時間が過ごせたお礼の意味で言ってくれているのだから、そこは遠慮してはいけないですよね。そういう距離感。

 

川崎:そうなんですよ。それこそ経験さえ積めば、どんどん上がっていくものなんですけどね。

 

アル:私たち二つの本の共通点っていうのは、「自分で選ぼう」というキーワードですよね。「男から選ばれる」から「自分で選ぶ」への価値観の転換だと思います。それは当然ながら、「自分の欲しいものが自分でわかっていないと手に入らない」ってことですよね。

 

川崎:それは共通して、同じだなと思いながら私も読んでいました。どうしても恋愛脳を満たしてくれるのは、ヤリチンだったり既婚者だったりする人たちの方が絶対うまいから。

 

だから自分は本当に結婚したいのか、それとも恋愛をしたいのかっていうのを、きちんと自分の頭で考えて欲しいですね。彼らは簡単に口を開けて待ってますからね。普通に歩いてるだけで。

 

アル:妖怪”妻とはもう何年もセックスレスだから”とかね。本当にそういうのが跋扈(ばっこ)してますよね。

 

川崎:やっぱり好きっていう感情を、なんていうのかな、一番だと思わないっていうのが大事ですね。恋愛感情なんて一時の錯覚、脳内麻薬のカラクリなんだっていうことは自覚を持った方が良いですね。

 

アル:あとは皆アドバイザーを探すと良いですよね。本では「年上の経験豊富な既婚女性みたいな人がすごくいいよ」って書いてますけど。職場でも趣味の場でもバーでもいいから、そういうアドバイザーを見つけてほしいです。オクテな子って友達もオクテだったりして、オクテ同士で相談してるから何にも解決しないんですよ。

 

川崎:新入社員同士で、給与明細見て悩んでるみたいな。

 

アル:そうなんですよ!この会社の将来について悩むみたいな。いやいや、あなたたちよくわからないでしょうって。

 

川崎:適切な相談ができる女友達は財産と思って資産形成して欲しいですね。

 

アル:今日はありがとうございました。

 

川崎:ありがとうございました。

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川崎貴子

リントス株式会社代表。経営者歴21年。女性の裏と表を知り尽くし、フォローしてきた女性は1万人以上。「女のプロ」の異名を取る。プライベートではベンチャー経営者と結婚するも離婚。8歳年下のダンサーと2008年に再婚。12歳と5歳の娘を持つワーキングマザーでもある。著書に『私たちが仕事をやめてはいけない57の理由』(大和書房)、『愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる。』(ベストセラーズ)、『結婚したい女子のための ハンティング・レッスン』(総合法令出版)、二村ヒトシとの共著に『モテと非モテの境界線 AV監督と女社長の恋愛相談』(講談社)等がある。

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