自主制作CDについて、これまでに企画から、録音からマスタリングの説明、そしてISRCの取得までお話してきました。
いよいよ次は、CDジャケットやブックレットのデザインです。
レコーディング技術やジャケットデザインの分野において、演奏家は素人という場合がほとんど。
それなのに自分のアルバム作りでは、全体を統括する指揮者にならなければいけません。
そんな素人指揮者が、他の分野のプロとうまく連携し、作品を完成させるコツを今日はお話したいと思います。
なぜプロにジャケットデザインを頼むのか
レコーディングやマスタリングをプロに頼んで、クオリティの高いものにした場合、ジャケットデザインを軽く考えて予算を削り、自作の素人ジャケットにしてしまったら、中身と外見はアンバランスです。
それではまるで、プロオケの中で、小学生の吹奏楽部の子にソロを吹かせるようなもの。
音のクオリティを上げたら、ジャケットにも気を配って完成度を高めましょう。
予算をかけたくないと言って、デザインが好きな友人などに無償でお願いしたりすると、後になって思わぬトラブルになることもあります。
デザイン作業や工場への発注には、専用のソフトウェアが必要です。
デザイナーではない友人にジャケットデザインを頼んで、結局工場へ入稿できるフォーマットに変換できなかったという例もありました。
音楽家が音の些細な違いを弾き分けるように、デザインもプロならではのアイディアと技があります。
デザインをプロにお願いする一番の利点は、ここにあります。
もちろん、予算の都合で何かを削らなければならないことも多くあります。
ここでデザイナーへの予算を削らずに、クオリティと完成度の均衡をとる他の方法はいくらでもあります。
ブックレットのページ数を減らしたり、仕様を変えたり、海外プレスへ出すなどの比較検討も可能です。
そういった比較もプロのデザイナーであれば提案してくれる場合も多く、頼りになる存在です。
デザイン作業に入る前に最も重要なこととは
デザイン作業に入る前に、最も重要なことは「必要事項を最初に全部固めておく」ことにつきます。
次のステップを踏んで、ジャケットやブックレットの内容を固めましょう。
1.ジャケットのイメージを固める
完成した楽曲の音源を聴きながら、そこから何をイメージしたでしょう?色はどんな感じですか?
建物か、風景か、幾何学的なものがいいのか、いろいろとまずは想像してみます。
絵を描くことが好きな人は、自分でスケッチをつくってみてもいいかもしれません。
2.具体例を探してみる
市販されているCDジャケットから、自分のイメージに近いものをいくつかピックアップして参考にしていきます。
完成図をここで、実物を見ながら想像していくのです。
色の使い方や、写真の配置、文字の雰囲気など実物を見ながら、さらにイメージを固めます。
3.ブックレットの内容を全部決める
内容が決まらなければ、何ページになるか、文字の大きさをどれくらいにするのかなど、基本構成が全く決められません。
文章だけでなく、プロフィール写真、必要な絵や写真の素材、楽曲リストやスタッフクレジットに至るまで、全て最初からデザイナーに渡しておきます。
一度組み上がってしまってから、「やっぱりこれ入れて」「あれ抜いて」「一回試しに入れてみて」というオーダーはデザイナーの作業を多くし、さらにお互いの信頼関係にもヒビが入ってしまいます。
あまりに最初からのやり直しが多くなると、デザイン料金の追加費用が発生することもあります。
素人指揮者の自覚がチームをまとめていく
マイキングの回でも説明しましたが、自主制作CDの現場では、素人の見当違いの指示で作業が台無しになる怖さがあります。
演奏者、アーティストが主体になって、資金を出し、企画をし、制作を行うので、どうしても演奏家が一番エライ人になってしまうのです。
もちろん立場としてはそうでしょう。
しかしながら、全くの専門分野外のことに対して、自分の思い込みや、見当違いの指示を威丈高に出し続けると、他の人たちはついていけなくなるばかりか、本来持っているその専門スキルを出しづらくなってしまうのです。
わからないことは、誠意を持って聞く。
金出してるのはこっちだという意識だけで動かない。
プロの技を信頼する。
これらができるだけで、そのチームは本当にうまく回っていきます。
そうやって出来上がったCDは、関わった人たちも誇りをもってくれます。
自分のSNSでも紹介してくれたり、販売のお手伝いをしてくれ、良いスパイラルが生まれてくるのです。
A dream you dream alone is only a dream. A dream you dream together is reality.
一人で見る夢は、ただの夢。一緒にみる夢は現実になる。-ジョン・レノン-
『自主制作CD』という作品は、統括する指揮者がその道では素人、そしてその他スタッフが全員プロという現場で作られていきます。
その意味をもう一度ここで確認できれば、あなたの作品は、もっともっと素晴らしいものになるでしょう。
あなたが夢見ていた自分のアルバムを作るため、チームみんなで現実にしていきましょう。