2015年も残りわずかですが、先日、会って話す機会のあった現役大学生の後輩から聞いた話によれば、早くも2017年卒業予定の学生は就職活動の準備を始めているそうな。
就活サイトでのプレエントリーが始まり、企業の採用活動が解禁となるのが2016年3月からということなので、まだ準備段階というタイミングではありますが。それでも、早い人はすでに精力的に準備を進めており、企業側もインターンシップの受け入れを始めているようです。
しかし、この「インターンシップ」。実質的な採用活動として実施する企業があったり、正社員並みの実務に携わらせながら全くの無給で働かせる企業があったりと、たびたびその在り方が問題視されるものでもあります。少し前にも、こちらの記事が話題になっておりました。
そんな「インターンシップ」について、本記事では改めて考えてみようと思います。
「インターンシップ」とは
「インターンシップ」、普段の会話の中では縮めて「インターン」と呼ばれる活動ですが、海外では就職に必須の採用活動として、当然のように行われているようです。ただ、インターンに参加したからといって内定が確定するというわけでもなく、不採用になった場合には実質的な「タダ働き」となり、その点が社会問題になっているという話もあります(参考:インターンシップ – Wikipedia)。
学生に就業体験の機会を提供する制度。実際に企業に赴かせ、一定期間、職場体験をさせる。
日本では近年、大学生や高校生が在学中に自らの学習内容や将来の進路などに関連した就業体験を行うこともインターンシップと呼ぶ。
いくつかの意味を参照してみたかぎり、日本ではほぼイコール「就業体験」「職場体験」の意味合いを持つ活動として認識されているようですね。
「気軽に仕事、業界、会社をのぞける」「価値観の異なる社会人、同級生と出会える」学生生活とは異なる外の世界を体験できる場
毎年、各社では趣向を凝らしたインターンシッププログラムを展開していますが、基本的には選考とは切り離して、学生に社会を知るための場を提供するのを目的に行われています。単に参加するだけで、選考に有利になるということはないということは肝に銘じておいてください。
大手就職ポータルサイトを確認してみても、やはり同様の言い回しで説明されていました。基本は「採用には無関係」「無給」「あくまでも体験」「社会人と話すことのできる機会」といった形。私自身が就職活動をしていた2011年前後の記憶と照らしあわせても、ほぼそのままの印象です。
実際のところはどうなんです?
ところが、実際に企業が行なっている「インターン」の蓋を開けてみれば、その内容や考え方は多種多彩。一概に「就業体験」とはひとくくりにできない現状があります。
例えば、一口に「インターン」と言っても、その対象期間はいろいろ。アルバイト並みの給料をもらいながら3ヶ月間みっちりと働くことになる長期のものもあれば、職場の各部署をぐるっとまわって説明を受けるだけの「1dayインターン」なんてものもあります。
加えて、ここ数年は採用時期が後ろ倒しになったり前倒しになったりと、経団連も試行錯誤の最中。企業側としてもやむなく対応を迫られた結果として、なかには就活解禁前から「インターン」の名目で実質的な採用活動を行なっているところもあるそうです。
そういった流れによって、優秀な学生の「囲い込み」が起こっている実情もあるとか。現役生の後輩の話でも、「就活解禁前だけど、すでに内定をもらっている友達が何人かいる」ということでした。優秀な学生が複数内定をもらう「数の格差」なんてものもありますが、現在は学生各々の就活に対する姿勢によって「時期の格差」も現出している様子。
こうなってくると、同時期に全員が同じスタートを切る「新卒一括採用」の平等性、システムの崩壊にもつながりかねません。そもそもの「新卒一括採用」という仕組みの妥当性はさておき、経団連の舵取りがより重要になってきていると言えるのではないでしょうか。
学生の「使い捨て」だけはあってはならない
リクナビの「よくある質問」ページを見るかぎりでも、なんだかどっちつかずという印象が拭い切れないインターン制度。
「採用選考とは切り離して考えよう」という回答の中では「選考プロセスの一部を位置付ける企業」の存在が明記されているし、アルバイトとの違いを「企業が学生を『労働力』として見ているかどうか」と書きながら、「アルバイトでも得られるものはある」という記述もあります。
あまりに活動内容が多岐にわたりすぎた結果、もはや「インターン」という言葉が形骸化してきている印象も否めない現状を見ると、「就業体験」や「職場体験」と言い切るか、別の言葉が必要になってきているのではないかしら。
なにより問題なのは、「インターン」という言葉の認識の違いによって、損をする学生が出てきてしまっていること。
「受けようと考えていた企業がインターンで採用活動を終えていた」という採用機会の損失や、アルバイト以上正社員未満の働きを求められながら無報酬というタダ働きの問題、ほかにも、早期内定の代価として企業から「就活の終了」を強要されるといったハラスメントの存在もあります。
学生をいち労働力として見なし、使い捨てるだけの悪質な企業は言語道断ですが、それ以外にも問題視されている懸念事項は少なくありません。
就職活動の時期や採用活動の在り方が試行錯誤されている今こそ、この「インターンシップ」の問題についても改めて検討するべき時期がきている、と言えるのではないでしょうか。