ここ最近、「note」が話題となっています。Twitterよりも長文の投稿が可能で、文章、画像、音声、動画などのコンテンツを公開・販売することのできるプラットフォーム。
2014年4月のサービス開始当初はネット上の一部界隈でも話題となり、またロックバンドの「くるり」が公式ファンクラブを開設したことなどでも注目を集めました。ユーザーは多岐にわたりますが、何らかの“クリエイター”が数多く参加するサービスとなっています。
そんな「note」が2016年に入って以降、またにわかに活気づき始めているようなので、現状を整理するべく簡単にまとめてみました。
有名ブロガーの参入と、収益公開
サービス開始当初からその存在を知っていた人なら「どうして今更?」と思えなくもない、現在進行形の「note」ブーム。ローンチ当初は確かに盛り上がりましたが、どちらかと言えば、“静かな流行”という例えがしっくりくるようなものであったと記憶しています。
2016年現在、その流行の火付け役の一人となったのが、プロブロガーのイケダハヤト(@Ihayato)さん。
彼のnoteアカウントから過去の投稿を見てみると、2014年4月のサービス開始当初に登録していた記録がありますが、その後は放置して使っていなかった模様。それが2016年1月、ブログの収益をnoteで公開・販売し、話題となりました。
それまでは、ご自身のブログとオンラインサロンを軸にネット上で活動していたイケダさんが、なぜ急にnoteを使い始めたのか。ご本人は、次のように説明しています。
なんというか、えらく今さらな話なんですが、「丹精込めて書いたブログ記事を、無料でたくさんの人に読んでもらう」というのは変な話だと思うわけですよ。
せっかく価値がある話を書いているんだから、100円~500円くらい課金したっていいじゃないですか。雑誌とか本とかは、そういう文化なわけですから。
2016年はネットのインフラも整い、コンテンツに課金することに対する抵抗感が、一層減ってくると見ています。かくいうぼくが、バンバンネットのコンテンツを買っていますから。もっと有料コンテンツが読みたいくらい。
他方では、同じく有名ブロガーの“はあちゅう”こと、伊藤春香(@ha_chu)さんもブームの中心にいらっしゃる様子。はあちゅうさん自身は以前から頻繁にnoteを使っていますが、2015年末に初めて売上・解説記事を公開しています。これに感化された人も多いのではないでしょうか。
もちろん背景には、古くからnoteを使い続けている古株ユーザーから口コミで広がっていったという一面もあると思います。ですが年が明けてから新たにnoteに登録し、コンテンツを公開し始めた人の多くは、おそらくこのお二方の影響を受けての参戦だったのではないかと。
ゆえにこの、現在の「note」流行現象に際しては、次のような層が多く集まっているとも推測できます。自分の創作物を収益化したい人、ファンを可視化してその声を直に聞きたい人、課金というハードルを設けることでコンテンツを適切な読者層に届けたい人ーーなどですね。
noteって、稼げるの?
はあちゅうさんやイケダさんに留まらず、SNS上のインフルエンサーがちらほらと集まりつつあるnote。LINE株式会社執行役員の田端信太郎(@tabbata)さん、株式会社The Startup代表取締役の梅木雄平(@umekida)さんなども記事を公開し、数多くの人に読まれているようです。
自分の周囲でも、個人のブロガーさんがちらほらとnoteに登録してコンテンツを公開し始めているようですが……実際のところ、noteって、稼げるんでしょうか?
実質書き出してから公開するまで1時間かからず、300円×1000人だから30万円。時給30万円!与沢翼サンには負けた・・・。 https://t.co/StOpOUXwZa
— 田端 信太郎 (@tabbata) 2016, 1月 23
どれだけ多くのフォロワーを持つかよりどんなフォロワーを持つかだってことをかっぴーさんとの対談の時にも話したけど、ほんとそれがnoteで証明されてて梅木さんはnoteフォロワー500人弱で150万円以上さくっと売り上げて、私フォロワー3300人だけど、売り上げではがっつり負けてる。
— はあちゅう (@ha_chu) 2016, 1月 28
【速報】私の売上は187万です(私の戦闘力は53万です的なノリ) https://t.co/do0dr3hnj9
— Yuhei Umeki (@umekida) 2016, 1月 28
ここまででご紹介したインフルエンサーのみなさんは、いずれもすでに実績を上げておられます。手数料でいくらかは取られることを考えても、新卒入社した会社員の月給以上は平然と稼いでいるようですね。
しかしこれは、彼らが「インフルエンサーとしてもともと有名だったから」だという見方もあります。一定数以上の固定ファンがついていれば、コンテンツが購入されるのも当然。「自分が好きな人の文章はお金を払ってでも読みたい」という感情は、決して珍しくないものでしょう。
今のところ、「全く無名のユーザーがnoteでコンテンツを有料販売し、かなりの額を稼いだ」という話は(自分の知るかぎりでは)見当たらないので、結局のところはその人の「ファンの数」と「コンテンツの売り方」次第だという印象です。……暫定的な結論ではありますが。
noteは「フリーマーケット」?
現在のnoteブームは、主に「収益公開コンテンツ」が取り上げられ話題となったこともあり、懐疑的に見る人も少なくありません。その手法はどこか情報商材的でもあり、「フリー」が基本思想としてあるネット住民からすると、良い印象を持てないのも自然であるように感じます。
この「稼ぐこと」が話題の中心としてある状況について、しばらくはどうも悶々とした感情を持ちながら見ていたのですが……。かっぴー(@nora_ito)さんの「noteはフリーマーケットに似てる」という意見を読んで、いろいろと腑に落ちました。
紙媒体はたくさん印刷すれば単価は安くなるし、少量の印刷だと割高になります。つまり、ニッチな内容だと単価が高くなって当然です。
しかしnoteは違います。
印刷費や媒体費がかからない、売手の言い値で取引されるフリマです。
noteで、その辺の本屋さんに並んでいるような内容を売ろうとしても難しくて、むしろnoteでしか無い、あなたにしか書けない超ニッチコンテンツに価値がつく。
本にはならない、役に立つかどうかも人によって異なる、ニッチだけど、それをおもしろいと感じる人は喜んで買うようなコンテンツ。そういったものを販売できるのがnoteの魅力であり、ユーザー自身が価格を付けられることから「フリマ」的だと説明しています。
これまでは無料公開しているブログなどを除けば、ウェブ上でコンテンツを販売する場合は電子書籍などでパッケージ化する必要がありました。電子書籍は一人でも執筆・販売ができるハードルの低い媒体ではありますが、「本」の名を冠する以上、ある程度の文量が必要となります。
その点、noteは電子書籍にするほどではなかった短いコンテンツですら、安く有料販売することができます。価格設定も自由なため、売り手の一存で調整が可能。それとなくではありますが、「ネットコンテンツ」に対する金銭価格も磨くことができるのではないでしょうか。
要するに、「売れる・売れないは別として、インターネット上で金銭を伴った活動を始める際には、この『note』というプラットフォームは非常に取っ付きやすく、試行錯誤のしやすいサービスである」と。かっぴーさんの記事を読んで、そんなことを思いました。
ちなみにnoteでは、コンテンツ全体をそのまま公開したうえで、記事の最後に購入ボタンを設置する「投げ銭」形式での課金も可能となっています。有料かするもしないも、使い方も各々の自由ですし、公開できるコンテンツも文章だけに限りません。
収益化云々はひとまず置いといて、普段からSNSで情報を発信しているような人には、広く勧めることができそうなプラットフォーム・note。試しに登録して、あれこれやってみるのもおもしろいのではないでしょうか。