_前回と前々回、2回にわたって、Twitterに関してまとめましたが、他にも「ソーシャルメディア」と呼ばれるWebサービスは数多く存在します。
Facebookやmixiといった「SNS」が代表的なものとして挙げられますが、それ以前から存在する、2ちゃんねるなどの「電子掲示板」、Yahoo!知恵袋などの「Q&Aサイト」、カカクコムなどの「口コミサービス」も、ソーシャルメディアの範疇です。
他には、おなじみの「ブログ」だったり、YouTubeやニコニコ動画、Ustreamといった「動画プラットフォーム」も同様。……え?なんでもかんでも含みすぎじゃないかって?
ところが、「ソーシャルメディア」という言葉の定義に当てはめて考えると、いずれのWebサービスも、その要件を満たしていると考えられるのです。
「もう一度「ソーシャルメディア」を考えよう 〜 人と繋がる双方向メディア」の記事中でも確認しましたが、ざっくりとまとめれば、「ソーシャルメディア」は次のようなものとなります。
ソーシャルメディアとは、これまでのように一方的に情報を受け取るだけではなく、自らも発信者になれる場所であり、そこでは他の人と情報交換や交流をしながらあらゆるモノを作り出すことのできる新しいメディアのこと
情報の送受信の「双方向性」が認められ、たくさんの人が日頃から情報交換と交流をしているメディア。
現代のネットからすれば当然の光景かもしれませんが、ソーシャルメディアがそれだけ「当たり前」のものとなったことの裏返しでもあるのでしょう。それゆえに、多種多様なサービスで溢れ返って、混乱している人も少なくないかと思います。
そこで、ソーシャルメディアに関する考え方として、いくつかの基準をまとめてみました。以下で説明するのは、武田隆さんの著書『ソーシャルメディア進化論』から引用した考え方となります。3年前の本ですが、現在でも参考になるものかと。
何を「拠りどころ」に繋がったコミュニティ?
ひとつめの基準は、そのソーシャルメディアが、何を「拠りどころ」としているか。
これは、そのメディア・サービスが、「現実生活」に準拠したものになっているか、または、「価値観」を重視して構成されたコミュニティとなっているか、という基準で区別しています。
「現実生活」と繋がる!
例えば、歴史の長いSNS、Facebookやmixiなどのサービスは、明らかに「現実生活」の繋がりを前提としています。Facebookはそもそもが実名登録制ですしね。
mixiに関しては、見知らぬ他人とも容易に繋がることのできるコミュニティではありますが、「オフ会」が頻繁に開催されていたことが記憶に残っている人もいらっしゃるのではないでしょうか。
つまり、きっかけはネットであるにしろ、その後、「現実生活」と繋がる、繋がりやすい文化圏があったと言えます。Facebookとは順序が逆ですが、そこには紛れもない「現実」が顔を覗かせていました。
最近のサービスですと、LINEがぴったり当てはまりますね。
自分の電話帳・連絡先に登録されている人同士で、閉じられた空間でやり取りをするアービス。他方、問題視されることもありますが、IDを教えあうことで見知らぬ他人と繋がることも可能です。
「価値観」で繋がる!
一方、「価値観」で繋がるサービスには、どのようなものがあるでしょうか。
これは、一般的に広く「ネットコミュニティ」と呼ばれているサービスの多くが当てはまります。
古くから続くサービスで言えば、2ちゃんねるに代表される掲示板や、オンラインゲームといったもの。2ちゃんねるには、様々なジャンルの掲示板があり、同じ「価値観」を持つ人と交流できますし、オンラインゲームは言うまでもなく、ゲーム好きの人が集まっている場所ですね。
もう少し新しいサービスですと、グルメ好きの集まる食べログや、暇つぶしや笑い、あるいは感動などを求めて人の集まる、YouTube、ニコニコ動画といった動画サービスなど。他にも、様々なメディアが考えられます。
「価値観」で繋がるメディアは、基本的にウェブ上で完結する、刹那的な交流がメインとなります。もちろん、そこでリアルとの繋がりを求めるのであれば、先の「現実生活」に即したサービスで連絡を!という話になると考えられます。
その繋がりの場に「求めるもの」は何?
もうひとつの基準は、そのソーシャルメディアに対して、人々が何を求めて集まってきているか。その「求めるもの」の違いで区別したものです。
具体的には、「情報交換」と「関係構築」という、ふたつの区分。これは文字通り、情報を交換するために集まっているのか、新たな関係を構築するために立ち寄ったのか、という視点ですね。
「情報交換」を求めて
「情報交換」に特化したサービスは、普段から多くの方が利用していることでしょう。
既に挙げたサービスで言えば、2ちゃんねると食べログ。Twitterを情報収集に使っている人もいるでしょうし、mixi内のコミュニティ機能では、情報のやり取りがされていたような思い出もあります。
他には、最安値を調べたり、製品のレビュー・質問などの交流もあるカカクコム。分からないことを質問すれば、誰かしらが回答してくれるYahoo!知恵袋。最新の経済ニュースについて、有識者の意見が読めるNewsPicks。などなど。
これらサービスでは雑談的なやり取りも散見されますが、主にユーザーが「求めるもの」は、有益(かもしれない)な情報を得ること。インターネットの「集合知」としての特徴が最も色濃く現れているのは、この範疇に属するサービスだと言えます。
「関係構築」を求めて
先の「情報交換」が求められるサービスでは、“有益(かもしれない)な情報”が重宝されるという旨を書きました。
それに対して、雑談的な要素がメインとなり、そこで作られる関係性を求めて集まる人の多いサービスが、こちらに属するものとなります。
新しい「関係構築」を求めて、という点で言えば、先ほどの「オフ会」の話が出たmixiが合致しますね。同様に、オンラインゲーム界隈でもオフ会が開催されることがよくあるという話は耳にしますので、こちらも当てはまると考えられます。
最近のサービスですと、Ustreamやニコニコ生放送、ツイキャスといった、動画の生放送サービスが、ぴったり適合するものだと思います。そこで行われる交流は、昔ながらのラジオ的、雑談的な側面が非常に強く、情報交換としての要素はあまり見られません。
ここで求められる「関係構築」は、何もリアルと繋がる必要はなく、ウェブ上で細くユルく関係性を持つような場合も含まれます。むしろ、そちらの面の方が強いかもしれません。
メディアに何を求め、どのように利用するか
これらの基準は漠然としたもので、全てのソーシャルメディアを深く完全に把握するには、どうも当てにならない考え方であるようにも思えます。
ですが、なんとなくでもこの基準・区分を知ることによって、それぞれのメディア・サービスに対する見方を分かりやすいものに変えることができると、僕は考えています。
例えば、前回の記事では、企業がTwitterを活用するにあたって、参考となりそうなアカウントをご紹介しました。
Twitterを説明することが難しいのは、ユーザーの使い方によって、本記事で説明した基準の全てに当てはめることができるからです。
自社の商品購入、つまり「現実生活」に繋げることを目的として、ひたすら宣伝を続けるようなアカウントがある一方では、企業の名を冠しているにも関わらず、ほとんど宣伝を行わず、ひたすらフォロワーと雑談に興じている、「関係構築」視点のアカウントもあります。
ということは、逆に、こう考えてみるとどうでしょう。アカウントによって使い方がばらばら、ここで説明した、「拠りどころ」と「求めるもの」の基準に当てはめることができないということは、目的に応じて、いくらでもカスタマイズが可能、と言い換えることができるのでは?
「現実生活」に繋がる商品購入を狙って、有意義な「情報交換」を積極的に行うも良し。自社の分野と類似する「価値観」を持つユーザーとの「関係構築」に取り組み、ファンを増やそうとするも良し。
他にも組み合わせは考えられますし、時と場合に応じてバランスを変えてもいい。特にTwitterで人気の企業アカウントを見ていると、その辺りのバランスが絶妙であるように思います。
Twitterに限らず、様々なソーシャルメディアを利用することを考えているのであれば、この基準は大いに参考になるはず。
ただなんとなく、周囲の真似をして使うのではなく、一度、利用する目的や、サービスそのものを見なおしてみるのも悪くはないのではないでしょうか。