先日の記事で、「キュレーション」と「口コミ」の価値が高まっている、という点について簡単にご紹介しました。
これはつまり、インターネット上での情報収集において「人」が重視されるようになった、と言い換えることもできます。
これまでのように、「◯◯新聞が好きだから」「◯◯ニュースは解説が分かりやすいから」といった、各メディア単体を信頼した情報のインプットではなく、「誰が言っているか」に注視するようになった、と。
この流れはネット上だけのものではなく、マスメディアでも近年、現れ始めています。専門家や大学教授という肩書きではなく、個人名を冠した番組やコーナーなどが当てはまります。池上彰さんがその代表格ですね。
そのように「人」が重視されるようになった現在、僕らはどのように「情報」と向き合い、インプットしていけばいいのでしょうか。
今回は、津田大介さんの著書『ゴミ情報の海から宝石を見つけ出す』より、ネット社会における情報収集の考え方、情報リテラシーについて抜粋、ご紹介します。
ソーシャルメディアの「人を選ぶ」構造
本連載では、何度も「ソーシャルメディア」の特徴について取り上げてきました。
一見すると難しそうに見えますが、実際は単純な構造を持っており、他人と「繋がる」ことによって、多くのメリットをもたらしてくれるメディア。
そもそもソーシャルメディアそれ自体が、人を重視し、人を「選ぶ」メディアであると言うことができます。
Twitterの仕組みが分かりやすいですね。基本的には自分が気になる人や、関心のある分野について呟いている人、趣味嗜好が近しい人をフォローする構造は、まさに「人を選ぶ」システムとなっています。
この構造の問題点として『ゴミ情報の海から宝石を見つけ出す』の冒頭では、「エコーチャンバー(共鳴室)効果」という言葉を使って説明しています。
ソーシャルメディアを通じて多様な意見に触れているような気になっているが、そのじつ、自分の声が反響しているだけの空間にいる
自分と価値観が近い人の意見にしか触れないことで、自分の意見が多数派だと勘違いしてしまう
ゆえに、ソーシャルメディアは自分だけの「世間」をつくるサービスであるとして、これからの情報リテラシーは「人を見る力」「人を選ぶ力」が重要になってくると、筆者は書いています。
自分の「軸」と、情報の「メンター」を見つける
人を「見る」にせよ「選ぶ」にせよ、そこには何かしらの判断基準が必要となってくると思います。
例えば、ある人のTwitterアカウントのタイムライムを遡ってみて、明らかにデマを拡散しているだとか、他人に罵詈雑言をぶつけているだとか、そのような点がまず大前提。
そして、より成熟した情報の受け手になるためには、本やネット、他人からもたらされる知識をもとに、自分の「軸」をつくる必要性がある、と津田さんは書いています。
本屋に行って、自分が興味のある分野の単行本を買って読むことから始める
良書を見抜く目を養うには、書評サイトを参考にすること、書店で気になる本を買うこと、トークイベントに行くこと
本を読むスピードにこだわる必要はなく、「読んでいて時間を忘れるような本を見つけて、じっくり読む」こと
著者個人の考え、あるいは一分野についてまとめた「本」という媒体は、知識を吸収することで自分の判断基準≒軸をつくり出すにあたって、有用性が高いものであると言えるでしょう。
そしてもうひとつ、自分の「軸」を構築するために、信頼できる人の発信する情報を追いかけ、参考にすることを勧めています。
「この人の言うことはおもしろい」「この人の情報は信頼できる」といったメンター(導師)的存在を何人かつくる。その人が本を書いているなら全部読む。その人が紹介する情報や書籍を継続的にチェックする。そうすることで、自分が情報を読み込むための軸ができてきます。
同時に、「信者」になる必要はない、とも書いています。複数のメンターを見つけて、自分をレバレッジするためのツールとして、メンターを「使う」気構えが何よりも大事である、と。
ざっくり言えば、自分が「いいね!」と感じた人を参考にすること、でしょうか。
感覚的には、「ファン」と「読者」の中間くらいだと僕は考えています。その人の考え方を取り入れつつ、自分の情報発信に活かすこと。それを繰り返していれば、自然と知識は増えているものです。
また、そのような「メンター」は、時によって変わってくるとも思います。
自分の場合ですと、会社員をしていた頃は、仕事観や働き方に関する言説の多いTwitterユーザーやブロガーさんをチェックしていました。ですが最近は、広く、考え方や言葉について論じている人の意見を追いかけるようになりました。
その時々の自分に最適化されたメンターを見つけ、参考にすればいいのではないでしょうか。常に同じ人を追いかけていては疲れることもあるでしょうし、盲目的な「信者」と化してしまうのも考えもの。バランスは大事ですね。
インターネットではあらゆる人との交流が可能ですが、日常的に使っていると、どうも関わる人が固定化されがちです。
そうなることで触れる情報も偏り、閉じこもってしまってはもったいない。
ソーシャルメディアを有用に使い、情報を効率的にインプットするためにも、そのような「人の選び方」や、自分のタイムラインの精査などを定期的に行なってみてはいかがでしょうか。