インターネットを巡る旅

ネット界隈におけるダイレクト恋人リクルーティングの話

先日、こちらのページが話題になりました。「あなたのエンジョイ力を活かして、私の未来の可能性を広げませんか?」と題したこの文章の正体は、就職活動でおなじみの「応募要項」を模した「恋人求人」です。

 

「インターネット上での恋人募集」と聞くと、あまり良いイメージが浮かばない人も多いのではないでしょうか。検索すると「恋人募集掲示板」が多く出てくるものの、どうしても「出会い系」の印象がついてきてしまう部分もあるのではないかと思います。

 

しかし一方で、冒頭の記事のような「恋人募集」もたびたびネット上で話題になり、それが良い結果に結びついたケースも少なくないと聞きます。今回はそんな、インターネットを介した言わば「ダイレクト恋人リクルーティング」と呼べる活動について、簡単に振り返ってみようと思います。

 

「結果は有料!」の恋人求人

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【彼氏を募集します】あなたのエンジョイ力を活かして、私の未来の可能性を広げませんか?|さとうひより|note

 

まずは、冒頭の記事を改めて確認してみましょう。

 

その内容を見てみると、筆者のプロフィールを「企業情報」として掲載するなど、一口に言えば自分を使った「求人」のパロディとなっています。「書類審査」に始まり、会って話をする「一次面接」を経て、デートをする「二次面接」と「最終面接」。それらを通過すれば晴れて「採用」となり、恋人関係になれるというものです。

 

1ヶ月後には途中経過としてセルフインタビューの記事が公開され、6月末には「結果発表」がありました。結果の記事に関しては有料となっているため、その内容を見ることはできませんが、ウェブメディアからインタビューを受けるなど、広く話題になったことは間違いありませんね。

 

「お見合い」のクラウドファウンディング

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「好きになってもいいですか?」ーー178cmの独身♀(26)が、本気のお見合い! – CAMPFIRE

 

一方で、先ほどの「恋人求人」の募集が投稿される1ヶ月前には、クラウドファウンディングサービス「CAMPFIRE」にて、「お見合い」の資金調達をするプロジェクトが話題となりました。

 

サイト上でお見合い相手を募集しつつ、お見合いの準備に必要な写真撮影・服飾費購入のための資金を集め、本番に臨もうというもの。支援に対する見返りとしては、お礼メッセージやお見合い写真のポストカードのほか、公開お見合いイベントの立会人としての出席資格など、多彩なリターンが用意されていました。

 

本企画には目標金額26万円の倍以上の支援が集まり、4月末、無事にプロジェクトを達成。7月現在は、撮影したお見合い写真のサンプルが届くなど、着々と準備が進んでいるようです。

 

GoogleAdwordsを使った彼女募集

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2年付き合った彼女と別れたのでGoogleAdwordsで彼女を募集してみる – razokulover publog

 

少し時を遡り、2013年。この年は「恋人」に限らない「募集」が何度も話題に挙がりました。その代表が、上記の「GoogleAdwords」を使った彼女募集。当時大学4年生、就職を控える学生の身だった筆者さんが取り組んだ、Googleの検索結果ページに「恋人募集の広告」を掲載する試みです。

 

話題になるやいなや5人から応募があり、最初に連絡をくれた女性とデートへ。翌月には交際&同棲の報告記事が投稿されるという展開の速さに驚いていたのも束の間、翌年には入籍してハッピーエンド。「広告」の可能性を感じる、素敵な試みとなりました。

 

自社ブログを使ったお嫁さん募集

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紳さんこと、株式会社LIGメディア事業部・部長の竹内紳也が嫁を募集します。 | 紳さんの秒速結婚生活

 

「驚きの速さ」という点で言えば、同年4月に公開された「嫁募集」の記事もすごかったですね。

 

株式会社LIGに所属する部長さんが自社ブログでお嫁さんを募集する記事を掲載したところ、14人もの方から応募が。そのなかに「結婚のご提案」というタイトルでPowerPoint資料を送ってきた人がおり、心惹かれて提案書を返送。お互いの会社の社長が見守る中、プロポーズ&婚姻届への署名・捺印までしてしまうという、“秒速結婚”でハッピーエンドとなりました。

 

自社メディアで結婚相手を募集するという試みもそうですが、半月という短いスパンでの急展開はすごいですよね……。ラブレターでなく「パワポ資料」を使うという、ウィットに富んだやり取りも素敵ですね。

余談:「世界一即戦力な男」

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世界一即戦力な男・菊池良から新卒採用担当のキミへ

 

「恋人」や「お嫁さん」からは少し離れますが、こういった形で「自分」を前面に推し出した試みと言えば、同じく2013年に話題になった「世界一即戦力な男」のサイトがあります。

 

就職活動において、企業側から逆に応募してもらうための「逆求人サイト」であり、ここまで取り上げた「恋人募集」系のページと同じ流れを汲んでいると言えるのではないでしょうか。

 

こちらの“世界一即戦力な男”こと菊池良さんはその後、先ほどの株式会社LIGに入社することになったほか、書籍化にドラマ化といったメディアミックス展開もされるなど、ネットの枠を出るほどに注目を集める結果になりました。

 

※ちなみに、その1年前には「メチャクチャにヤバイ就活生・近藤佑子を採用しませんか?」が話題になり、こちらの方も内定を獲得しています。

 

イケてるしヤバい婚活ページ

スクリーンショット 2016-07-15 10.55.22イケてるしヤバい男 長島からのお知らせ

 

言わば「自分コンテンツ」とでも呼べそうな、こういった数々の試み。ここ数年の間に話題になったものとしては、こちらの「イケてるしヤバい男 長島からのお知らせ」がひとつの原点にあると言えそうです。先の菊池さんと近藤さんのサイトでも名前が出ていましたね。

 

このサイトは、「オモコロ」などでもおなじみの株式会社バーグハンバーグバーグが制作したもの。“婚活が上手くいかない、一般男性の婚活を効果的に演出し、促進させる「イケてるしヤバイWebプロモーションページ」”として公開され、その後もいくつかの企画が展開されました。

 

バレンタイン企画告白企画を経て、2013年末にはめでたくご結婚されたそうです。

 

まとめ

以上、一部で恋人以外も含む、インターネット上の「ダイレクト恋人リクルーティング」についてざっくりとまとめてみました。

 

こうして見ると、「募集要項」に近しいある種のテンプレートがどのページでも採用されていながら、各々が独立したコンテンツとして魅力を持っているようにも感じます。当然と言えば当然ですが、やはり肝となっているのが「人」だからなのでしょうね。

 

また、特にネット上で注目を集めたこれら企画に限って言えば、非常に高確率で「成功」に至っている点も興味深いように思います。恋人募集では彼氏彼女が、就活では内定が、それぞれの目的に添う形で実現されている様子。

 

それだけサイトが作りこまれているのはもちろんのこと、そもそもご本人に魅力があるからこその結果なのだとは思います。ーーとは言え、この成約率もまた魅力的。常日頃から恋人が欲しいと考えている人にとっては「朗報」であり、充分に試す価値がある(自己責任で)……と言えるのではないでしょうか。

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けいろー

フリーライター。ネットカルチャーと共に育ってきたゆとり世代。執筆実績として『HATSUNE MIKU EXPO 2016 Japan Tour』公式パンフレット等。

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