ここ最近、Twitterのタイムラインを眺めていると、「BuzzFeed」の名前を見ない日がほとんどありません。日本版のオープン当初こそ、海外版の記事の翻訳やネットで盛り上がっている話題のまとめが多かった印象もありますが、近頃はまた別のジャンルで注目を集めている様子。
2016年初頭に取り上げたときはあまり目立った動きはなかったようにも思いますが、ここ数ヶ月の記事を見ていると……何と言いますか、「取材力」が尋常じゃないように見受けられます。何らかの話題が世間的に注目されるやいなや、すぐに取材へ赴き記事として書き上げるスピード感。
しかもそれは、多くのマスメディアが取り上げるような話題にとどまらず、ネットにおける流行や個々の炎上案件にまで及ぶという幅広さ。それゆえ、「信頼できる一次情報を発信しているウェブメディア」として、ネットのヘビーユーザーからも好評を得ているようです。
「バイラルメディア」の悪印象も何のその、今や固定読者・ファンも数多い、BuzzFeed。今回はそんなBuzzFeedについて、過去に注目を浴びた「裏取り」記事をいくつか振り返ってみようと思います。
「停電時に中国人が火事場泥棒」デマ、投稿者は取材拒否の後に投稿削除
先日の話題ですが、10月12日午後に東京都内で発生した大規模停電の際、Twitterで拡散されていたデマについて取り上げた記事です。
ツイートで言及されている店舗に対して電話取材。事実確認を行い、それを複数ブランドの店舗にも広げたうえで、ツイートの投稿者にも連絡をしています。当時、あまりに挑発的なツイートを繰り返していたのを見て自分も眉をひそめた覚えがありますが、その後、投稿主はツイートを削除。アカウントを非公開にした旨も、BuzzFeedの記事中にしっかりと追記されています。
炎上した「豊洲市場の柱の傾き」報道 フジテレビが「真摯に反省」した1分半の検証
こちらも最近の炎上。10月2日にフジテレビで報道された「豊洲新市場の柱の傾き」について、疑問を抱いたブロガーさんが翌3日にブログ上で問題を指摘したものです。
放送後、BuzzFeed Newsは都に柱の傾きの有無を問い合わせたうえで、フジテレビにもFAXで質問状を送付。都議会の音喜多駿議員による現場の視察・計測の結果を参照しつつ、改めて柱の問題に触れた10月9日の放送内容を紹介し、一連の流れをまとめています。直接的な批判は避けつつも、疑問を呈する形で締めくくっています。
【シン・ゴジラ】まとめサイトが流した「北米で酷評の嵐」は本当か?
こちらは、まとめサイトの記事に対する問題提起。10月3日、映画『シン・ゴジラ』が“北米で酷評の嵐”となっているという旨の記事を「俺的ゲーム速報@刃」が投稿。それに対して、はたして本当にネガティブな感想ばかりなのかを検証しています。
まずは、まとめサイトが参照した掲示板サイトのコメントを抽出し、むしろポジティブだと判断できる感想が多いことを確認。加えて、当該記事で紹介されている感想が、誤訳あるいは捏造であるとも指摘。さらには他の複数サイトでの評判も引用しつつ、「まとめサイトによる「酷評の嵐」は言い過ぎだろう」と結論づけています。現時点で、まとめサイト側から反論や謝罪は出ていません。
まとめ
ここでは3つの記事を取り上げましたが、これまでにBuzzFeedが扱ってきた類似の裏取り・検証記事は、まだまだ数多く存在します。
- それは偽りの伝統 教材に残り続ける「江戸しぐさ」
- 批判殺到の「押しかけ」ボランティア問題 現場で当事者に話を聞いた
- 吹奏楽コンクールを捨て、甲子園の応援に 秀岳館高校・吹奏楽部員の思い
- 一橋大・ゲイとばらされ亡くなった学生 遺族が語った「後悔」と「疑問」
- ニンテンドースイッチの記事で「はちま起稿」がデマ、任天堂が完全否定
特筆すべきは、その「取材の早さ」と「検証の正確さ」。
ネット上でデマが流れて拡散されるやいなや、即座に対象を取材し、早ければ同日中に記事にして投稿するという驚きのスピード。さらにその検証内容も正確を期しており、のちに事態が進行して追記することはあっても、大きな修正を要することはほぼなかったのではないでしょうか。
早く、しかも正確とくれば、そりゃあ読者も安心して読めようというもの。年初のオープン以降、ウェブ上のデマ・炎上に際してたびたび存在感を発揮してきたBuzzFeed Japanはすでに、「信頼できるウェブメディア」としての地位を確立しているように思います。
オープン当初こそ、日本のネット上では悪印象の強かった「バイラルメディア」の文脈を汲むサイトということもあり、懐疑的な目で見られていた記憶もあります。でも気づけば、「バイラル」のイメージも何のその。ネガティブなイメージは、もはやどっかに置いてきてしまったような実感があります(ヨッピーさんがフルボッコにしていたのは「BUZZNEWS」でしたね)。
今ではむしろ「BuzzFeed」というブランドでもって、何か問題が起こるたびに「BuzzFeedなら取材に行ってくれるはず!」という期待すらされているようにも感じる昨今。従来のウェブメディアにはなかった裏取り・検証機能を果たし続けているBuzzFeedから、今後も目が離せません。