酒と泪と女と女

男性はなぜ結婚にコミットしてくれない? 男が感じる“責任”と“負担”とは
桐谷ヨウ(ファーレンハイト)× 福田フクスケ × 川崎貴子対談(第1回)

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「なぜ、男性は結婚にコミットしないのか?」元外資コンサル出身で人気恋愛コラムニストの桐谷ヨウ(ファーレンハイト)氏と、非マッチョ・文系のくすぶり男子代表であるフリーライターの福田フクスケ氏をお招きし、その謎を紐解いていきます。

(文/福田フクスケ

 

スナイパー桐谷と、スパイダー福田

川崎貴子(以下、川崎):今日は、「なぜ男性は結婚になかなかコミットしてくれないのか?」という婚活女性の悩みを解消するために、2人の男性ゲストに来てもらいました。まずはお二人さん、簡単に自己紹介をしてもらっていい?

 

福田フクスケ(以下、福田):はい、フリーライターの福田フクスケです。今でこそ恋愛やジェンダーにまつわる仕事が多いですが、個人的には30歳になるまで典型的な“非モテメンタル”でした。若い頃って、男性から積極的にリードするような振る舞いをしないとなかなか恋愛に発展しないじゃないですか。俺はそういう“男性役”を演じることが全然できなくて、そのコンプレックスが強くありました。

 

川崎:でも、30代になってからはそんなことないでしょう? 何が変わったの?

 

福田:ライターとして自分で発信するようになってから、単純に出会う母数が増えてこういう男にも需要があるんだ、と思えるようになったのが大きいですね。コミュニケーション・スタイル自体は非モテ時代とまったく変わってなくて、今でも気になる人を自分から“口説く”みたいな作法が全然わからないし、うまくできないんですよ。

 

川崎:ヨウちゃんは?

 

桐谷ヨウ(以下、桐谷):はい、桐谷ヨウです。もともと大手企業に勤めてサラリーマンをしていて、その時の経験から恋愛や仕事に関するコラムを執筆するようになりました。僕は、10代の終わりから20代にかけてずっと女の子が大好きで、「女の子ってなんていいものなんだ」と思って生きてきて。

 

川崎:それが滲み出てるよね(笑)。

 

桐谷:男よりも女の子と関わっているときのほうが、感情を揺さぶられることが多くて、かけがえのない経験をしている気がしてたんです。自分はずっとネアカで生きてきたし、関わる女の子もそうだったんですけど、恋愛についてブログで書くようになって、自分のことを好きになれずに厄介な恋愛をしている子がこんなに多いんだ、ということにけっこう面食らって。あらためて男女の恋愛って難しいものだなって感じますね。

 

福田:恋愛において、ヨウさんは積極的にコミュニケーションを仕掛ける“スナイパー型”で、俺は網を張ってマッチングする人を待つ“スパイダー型”(笑)。

 

桐谷:そうそう(笑)。

 

福田:対照的に見えるけど、2人とも小さい頃から体育会系のマッチョなノリに付いていけなかったり、男子より女子と話しているほうが楽だったり、意外と共通点も多いんです。だから、タイプは違うけど、今どきの30代男性に共通するよう本音を、ざっくばらんに話そうと思います。

 

“結婚が目的”に見えると男性は引いてしまう

川崎:キャリ婚」というマッチングサイトを始めて、結婚したいと覚悟を決めた男性と面接をするようになってみて思ったのが、女性が結婚したい時期と、男性が結婚を考える時期に、やはりすごくズレがあるということ。若い頃はモテた男性が、「まだいいかな」と思っているうちに、30代後半になって急に結婚を焦り出すパターンが多いの。どうして男性は、女性よりも結婚を意識するのが遅いんだろう?

 

福田:一般論として、特に若いうちは女性のほうがいろいろな意味で“リミット”というのを意識せざるを得ないですよね。そのせいもあって、男性は相手がいて初めて結婚を考えるけど、女性は“結婚がしたいから相手を探す”という風に、結婚が目的化しているように男性からは見えてしまう。そこを重く感じて引いてしまう男性はいると思います。

 

桐谷:話にはよく聞きますよね。30歳を過ぎた女の人が、付き合っている彼氏に「私のこと考えてくれてるの?(意味:結婚まだ?)」みたいに詰め寄ってしまうパターン。女子は「当然するでしょ?」と思っていても、男は“結婚=ハッピーライフ”と素直に思えないところがあって、それが負担に感じてしまうというか。

 

川崎:確かに。挙式や披露宴も含めた結婚というワンセットの儀式を、「年頃の女性は当然やらなきゃいけないものでしょ?」ってプレゼンされるのはプレッシャーだよね。

 

古越:「魔女のサバト」でも、結婚の切り出し方に悩んでる方は多いですね。みなさん、相手が結婚にコミットする気があるのかどうか、そこが定かじゃなくて苦労されてるみたいです。

 

桐谷:結婚を前提に恋愛するのと、恋愛した結果として結婚を考えるのとでは、やっぱり重さが違うんですよね。その点、「キャリ婚」は、最初に結婚ありきで出会いを求めている人しか参加しないから前提を共有できてそう。結婚の言質を取るためにもやもやする必要がなくなるというか。

 

川崎:そこは面接でも重視して聞きますから。結婚にコミットできてない人には、「ごめんね、コミットできてから来てね。待ってるよ!」って。

 

桐谷:そこが、他の恋愛マッチングサイトとは違うところなんですね。

 

川崎:だって、結婚の意志がない人に一生懸命婚活しても、こんなに無駄なことはないじゃないですか。そのリスクを取り除きたいというのが「キャリ婚」の大きな狙いだからね。

 

福田:一般的な恋愛市場で出会うと、男性はどうしても結婚に対して無計画でふわふわしている。そういう意味では、男性のほうがロマンチストで、女性のほうがリアリストですよね。

 

“結婚=責任を負う”というプレッシャー

川崎:じゃあ、なんで男性はそこまで結婚を負担に感じてるんだろう?

 

福田:ひとつには、結婚に課された“責任”を重く感じてしまうからだと思います。親世代が自分に与えてくれたような生活水準や教育レベルを、自分はきっと用意できないので、そんな自分にはまだ結婚の資格がないと感じてしまうんです。

 

桐谷:自分の両親も、父親は公務員でそれなりに年収があって、母親は専業主婦……っていう典型的な昭和のロールモデル家庭で育ちました。地方から都心の私立大学に通わせてもらって、今考えるとものすごくお金をかけてもらった。それを自分が再現しようと考えると、めちゃくちゃ腰が重いです。でも、じゃあいつならできるのかと言われると答えられない。漠然と「まだ今じゃない」って思っちゃう。

 

川崎:私も若いころそうだったから、気持ちはわかるの。今だっていっぱいいっぱいなのに、結婚したらなぜか女性の方が多く家事労働させられて、これ以上負荷がかかるような結婚なんてする意味あるの? って思ってた。周りのバリバリ働いているアラサー女性たちにも、そう思ってる人は多いと思うよ。

 

福田:今より背負うものが増えることへの不安は、男女どちらにもあるのか。

 

川崎:ただ、やっぱり子供の存在は大きいよね。前の夫とは、妊娠してから半年間籍を入れなかったんだけど、なぜかというと、お互いベンチャー経営者で不安定きわまりないのに、結婚するメリットがわからなかったから。でも、調べてみたら、どうやらお腹の子にとってはメリットがあるらしい、と。私の場合、結婚する理由はそこしかなかったな。それを踏まえて聞きたいんだけど、2人は子供は欲しい? だって今、精子も劣化すると言われているじゃないですか。

 

桐谷:マジですかぁ!? 知らなかった!(笑)

 

川崎:そうだよ。不妊だって半分は男性に原因があるの。だから、子供が欲しいなら、男性もふわふわしてないで早く結婚したほうがよくない? と思うんだけど、そこはイメージできてる?

 

福田:正直なところ、自分は今のところあまり子供が欲しいという気持ちがなくて、だからこそ結婚にコミットする気持ちが薄いんですよね。実際問題、子供ができたから結婚するという人はとても多いし、子供を育てるなら結婚していたほうが圧倒的にメリットが多い。逆に言えば、子供を持たない限り結婚するメリットはあんまり感じられないです。

 

桐谷:僕は、欲しいですね。ただ、それなりに子供にちゃんと手をかけたいからこそ、今はまだもう少し自分に時間を使いたいと思っちゃう。だから、僕みたいな考えの人は、“できちゃった婚”くらい決定的な外部要因がないと、腹をくくれないんじゃないかとも思うんです。お恥ずかしながら、精子も劣化するということを知らなかったので、「まだ急ぐ年じゃない」という認識は改めたいですけど(笑)。

 

福田:たぶん、準備万端と思えるのを待っていたら、子供なんて作れない気がします。たいがいの人は、“できちゃった婚”も含めた何らかの外部要因やらがあって初めて、半ば強制的に結婚にコミットしていくのが本音なんじゃないのかなあ……。

 

第2回に続く)

 

・桐谷ヨウ(@yohkiritani

・福田フクスケ(@f_fukusuke

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川崎貴子

リントス株式会社代表。経営者歴21年。女性の裏と表を知り尽くし、フォローしてきた女性は1万人以上。「女のプロ」の異名を取る。プライベートではベンチャー経営者と結婚するも離婚。8歳年下のダンサーと2008年に再婚。12歳と5歳の娘を持つワーキングマザーでもある。著書に『私たちが仕事をやめてはいけない57の理由』(大和書房)、『愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる。』(ベストセラーズ)、『結婚したい女子のための ハンティング・レッスン』(総合法令出版)、二村ヒトシとの共著に『モテと非モテの境界線 AV監督と女社長の恋愛相談』(講談社)等がある。

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