あの企画を担った広報・企画担当者に会いに行く

業界初の女性広報担当者が支えたホストクラブ×有名ブランドのコラボ【クラブ愛本店 groupdandy広報・ホスグル子さん】

2017年12月1日、老舗ホストクラブ「クラブ 愛本店」で、ファッションブランド「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」の貸切パーティが開催された。
イベントには、山田優、水原希子や小室哲哉、boyfriendをはじめとした人気モデルやタレント、インフルエンサー、メディア関係者など多くのファッション関係者が来店した。

愛本店では過去最大級となるこのイベントの開催を実現させたのは、広報のホスグル子さん。社内でたった1人の広報担当として奮闘している、業界初の女性広報だ。
イベント開催までにどんな苦労があったのか。そもそもホストクラブの広報とはどんな仕事なのか。お話をうかがった。

 

 

マークジェイコブスイベント成功の裏側

クラブ愛本店 groupdandy広報・ホスグル子さん

 

───「クラブ 愛本店」は、ホストクラブに行かない人でも名前を知っているほどの有名店です。今回のマーク ジェイコブスとのコラボ企画は、どのように立ち上がったのですか。(参考

 

ホスグル子(以下、グル子):もともと弊社で定期的に開催している「愛のディスコティック」というクラブイベントがあります。そのイベントの山野プロデューサーが、六本木のディスコ・ヴェルファーレの支配人だった方なんです。交友関係がとても広い方で、マーク ジェイコブスのイベント制作会社の方から、山野プロデューサーを介してご紹介をいただきました。

 

───過去最大級のイベントだったそうですが、社内やホストさんたちからの反響はいかがでしたか。

 

グル子:実は、多くのホストさんたちがマーク ジェイコブスを知らなくて……。一番に「これはヤバいお話が来たぞ」と青ざめたのは、私でした。上司であるCOO巻田と私だけが「ヤバいね」「頑張ろうね」と励まし合っていて。店舗のスタッフたちはピンときていなかったようで、ホストさんたちはあんまりプレッシャーを感じていなかったみたいです(笑)。

 

───広報として、イベントでのグル子さんはどんな役目でしたか。

 

グル子:当日の進行としては「ホストさんに接客をしてほしい」「シャンパンコールを2回してほしい」と、ご要望をいただいていました。進行や接客について、ホストさんたちに伝えるのが私の仕事です。

それから、今回のイベントは一切告知をしていませんでした。情報が漏れてはいけないので招待客リストの共有もなし。その中で、お客様の荷物がクロークに入らなかった場合はどうするか? 飲み物、食べ物にNGがある方がいたら? という突発的なトラブルも私が対応することになっていました。

 

───イベント規模に対して、行き当たりばったり感がすごい。

 

グル子:でも、会場の下見はかなり入念でしたよ。一般的には、イベントの下見って多くて3回くらいなんですね。でも、今回はマーク ジェイコブスの方とイベント会社の方が7~8回はいらっしゃいました。サイズを測ったり内装会社にその場で確認を取ったり、音の反響も確認なさってました。

当日は、Instagramにインスタ映えするきらびやかでおしゃれな写真が何枚もアップされていて興奮しました。そうやって熱意を持って、細部までこだわって装飾してくださったおかげですよね。カーテンをつけたりオブジェを置いたり、とにかく豪華に見えるよう設計していただいて。イベント後、原状復帰ではなくちょっと残していってほしいくらい素敵でした。

ホストクラブの広報とは?

ホストクラブに行ったら一度は体験したい! シャンパンコールとタワー

 

───マーク ジェイコブスとのコラボのきっかけになった「愛のディスコティック」の他、グル子さんが携わっているイベントにはどんなものがありますか。

 

グル子:まずは、ホストクラブ体験型女子会パーティホスパ!。それから、COOの巻田が講師を務めるホストの学校。マグロの解体ショーとDJイベントを融合させたマグロハウス。どれも、私が入社してから企画して実現したイベントです。

 

───どれもお客さん1人にホストさん1人ついてくれるホストクラブのイメージとはかけ離れた形式のイベントのような……。

 

グル子:最初にスタートしたのは「ホスパ!」です。2014年に、オモコロさんというweb媒体で*ホストの記事がバズって「ホスト行ってみたいね」という女性が増えた時期がありました。そのときに、カジュアルな女子会プランを作って、気軽に来てほしいという思いで立ち上げたイベントです。

*参考記事:【本当にホストってハマるの?】地味な三十路女が初めてのホストクラブに行ってみた。 – オモコロ

 

───確かに、ホストクラブって敷居が高かったり、正直怖くて行きづらかったりします。女子会と言われると、かなり気軽なイメージになりますね。

 

グル子:実はホストクラブ業界って、一般の方に向けた集客の施策を立てる発想がほとんどないんです。既存のお客様を奪い合っている状況です。

例えば他店さんで、グループ店のナンバー1を集めてイベントをしているところがあります。でも、それってホストクラブに来たことがない人にとっては興味がないですよね。男の子やお店は売り上げが上がって良いかもしれないけど、新しいお客様を集めるための「広報の企画」ではないと思います。

ホストクラブって初回は意外と安いですし、大きいグループだったら無理やり飲ませるようなこともありません。女の子がエステや一泊旅行に行く感覚で、癒されに来てくれたらいいなと思っています。

 

───イベントの告知には、どんなツールを利用していますか。

 

グル子:自社の告知のランディングページもあるんですけど、やっぱりFacebookやTwitterなどSNSを使った集客が主です。

 

───やっぱりネット集客がメインなんですね。集客で感じている課題はどんなことでしょうか。

 

グル子:男性向けにおこなっているセミナー「ホストの学校」では、最初は集客に悩みました。女性は好奇心旺盛な方が多いですし、スイーツ付きとかプレゼントありとか、ハードルをちょっと下げると来てくれます。

でも、男性は警戒心が強いというか……。「行ったら何かに勧誘されるのではないか」「何か売りつけられるのではないか」と、腰が重くなってしまうみたいなんです。なので、「ホストの学校」については無料にして、ボランティアでやっていくことにしました。今後も、男性の心理的ハードルを下げる方法については、考えていこうと思っています。

ホストクラブ広報のプロ意識

シャンパンタワー

 

───広報、集客、企画とさまざまな業務をこなしていらっしゃいますが、もともと広報の仕事をしていたのですか。

 

グル子:いえ、前職はミシュランの星付き割烹の女将でした。

 

───え! 女将さん!

 

グル子:女将時代に、友人に無理やり原宿のギャルソンカフェに連れていかれたんです。支配人が面白いおじさんで、イケメンに興味がない私はいつもそのおじさんを指名していました。実は、そのおじさんが今の弊社のCOOだったんです。

当時、自由時間の少ない女将を辞めてOLになりたいという相談をおじさんにしていました。そうしたら「一緒に働こうよ」と言ってくれて。でも、私はおじさんが何の仕事をしているか知りませんでした。「うちの職場を見に行こう」と連れていかれた先が、ホストクラブ「TOP DANDY」でした。

ホストクラブなんて行ったこともなかった。でも、お店の男の子1人1人と話していくうちに、真面目だし将来のこともきちんと考えていて、みんな良い人たちだなと感じました。ここで働いてみようと思ったのは、そのときです。

 

───広報を担当することは、最初から決まっていたんですか。

 

グル子:いえ、話しながら決まっていった感じです。ホストクラブ業界って、業界誌や看板の枠を取ってくるような内向きの広報はいるんですが、一般への集客を目的とした外向きの広報がいません。業界でも私が初めてで、何ができるかわからないけどやってみましょうということになりました。

今は、ホスパ! のMCもしますし、ディスコでは司会やアテンドもしますし、何でもやっていますけどね(笑)。

 

───イケメンに囲まれた女性広報って、それだけで役得というか、うらやましいシチュエーションに感じます。

 

グル子:ところが、私は全然イケメンに興味がなくて。一般的な女性は、周りにイケメンがいたらウキウキしたり、気に入った男の子はひいきしてしまったりするかもしれません。でも、私はかなりシビアに彼らを商品として見ています。そうでなければ、仕事になりませんから。

広報としては、ホストさんたちよりも、お客様やこれからお客様になってくれるかもしれない女性のみなさんに好かれたいです。「ホスグル子」のTwitterアカウントも、そのために作りました。女性の方に「ホストクラブ楽しそうだな」「行ってみたいな」と思ってもらいたい。そのために、普段から男性よりも女性からの視線をかなり意識しています。

 

───嫉妬されたり反発があったりすると、グル子さんだけでなく、お店やホストさんにとっても良くないですもんね。

 

グル子:はい。ただ、何を発信しても結局反発は出てくるんです。なので、それが全体の2%くらいに抑えられるような信頼される広報になりたくて、振る舞いには気を付けています。

例えば、「ホストさんと絶対に一緒に写真を撮ったりしない」「SNSに顔を絶対に出さない」「店舗に行ってもお酒を絶対に飲まない」とか。接待で店舗に行く機会もありますが、仕事で来てますという雰囲気と態度を心がけています。お客様は普通に楽しんでいただいて良いんですが、私は絶対にウーロン茶。一番下座で、ホストさんと話せないような席に座り、ただ様子を見守るくらいにしています。

業界初の女性広報がこれから挑戦したいこと

 

───「ホストクラブの女性広報」として、普段の振る舞いにも気を遣っているグル子さんの今後の目標は何ですか。

 

グル子:ホストクラブに行くことが、もっと身近なものになってもらえることです。ホストクラブに行く女性も、ホストとして働く男性も、みんな多少は周囲に隠しごとをしながらこういう業界にいると思います。そんな人たちのために、悪いイメージを少しでもなくしたいです。

そのために、どんどんメディアに露出したい。例えば、今回のマーク ジェイコブスさんのように、アパレル業界など他業種のプロモーション活動にもっと店舗を利用していただけるようになりたいと考えています。場所をお貸しするだけでなく、ホストさんたちを、モデルとしてや、各種イベントなどでウエルカムシャンパンなどの演出に起用していただけたらと。

ホストさんたちは、一般的な男の子たちよりはおしゃべり上手。なので「ちょっとこの場をもたせておいて」なんていう、パーティやイベントに色を添える演出の1つとして選択肢に入れていただきたいです。

 

───マーク ジェイコブスのイベント写真を拝見しましたが、愛本店は、お店がとても明るくてひらけた雰囲気ですよね。

 

グル子:通常、ホストクラブってちょっと暗くて、店内も他のお客様同士が見えないように複雑な作りになっているんですよ。なので、空間として結構使いにくいお店が多いです。

ですが、愛本店とTOP DANDYは空間が広いのでイベントにおすすめです。キャパが200人収容くらいあるので、バンド、クラブイベント、セミナーなど何をするにしても使い勝手が良いですよ。

最近でいうと、TOP DANDYはドラマ『トドメの接吻』のロケ地に使われて、ちょっと注目される機会がありました。この機を逃すまいと、お店では、トドメの接吻プランも作りました。

こんな風に外部の何かとコラボして知名度を上げていくっていうのは、今後もずっとやり続けたいですね。何か企画がありましたら、ぜひ声をかけてください!

 

クラブ 愛本店:http://www.aidakanko.com/ai1.html
TOP DANDY:http://topdandy.jp/
ホスグル子(Twitterアカウント):https://twitter.com/hosuguruko

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むらたえりか

宮城県出身。「仕事の依頼をすることが、好きなアイドルへの一番の貢献」という思いから、広告・Web制作ディレクターの道へ。同時に、ライターとしても活動。取材・インタビュー・レビュー記事などを執筆。週末はフォークダンスなどを踊っています。

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