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【編集者インタビュー】倉田卓史さん(講談社)「『本を書くこと』そのものに意欲を燃やしている人と一緒に本をつくりたい」

書籍づくりの現場ではどのような作業が行われているのか。実際に本を出版した著者と、その担当編集者のインタビューを公開します。企画の経緯から執筆・編集・デザイン・売り方まで、生の声をお届けします。

 

書籍:『今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則――『ジャイアントキリング』の流儀』(講談社)

 

編集者:倉田 卓史さん(講談社)

 

 

 

───著者の仲山進也さんとの出会いのきっかけはどのような形でしたか?

そのときの印象も含めて、仲山さんの著者としての魅力を教えてください。

 

倉田卓史さん(以下、敬称略):かつて担当させていただいた著者の方からのご紹介でした。

ひょんなことで再会し、お互いに大好きなサッカーの話題で盛り上がるうちに『ジャイアントキリング』の話になって。

マンガのおもしろさに対する着眼点が独特で印象に残りました。

単にストーリーを楽しむだけではなくて、ビジネスに役立てるための「考える素材」としてとらえていらっしゃるように感じたんです。

個人的に、ビジネス書は「解決策を提示する」というより、「解決策を生み出しうるかもしれない視点を提供する」という姿勢で書かれたものが好きなので、そういう本が書ける人なのではないか、と。

 

───今回の本のなかでは、『ジャイアントキリング』というマンガが事例として全面的に活用されているのですが、最初に今回の企画内容をご覧になったときの第一印象はどうでしたか?

 

倉田:アニメ化もされるなど、ファンも多い人気マンガなので、いわゆる「関連本」として見られないだろうか、という心配が先に立ったかもしれませんね。

でも、実際に使用するカットが決まって、全体の展開が見通せるようになると、杞憂だったことがすぐにわかりました。

主人公である達海猛と仲山さんが、弾むようにキャッチボールをしている躍動感が伝わって来て『ジャイキリ』を消化=昇華した一冊になることが確信できましたから。

 

───仲山さんは本書執筆にあたり、サッカーに詳しくない方、『ジャイアントキリング』を読んだことがない方にも内容をわかりやすく伝えられるよう意識したとおっしゃっていました。

倉田さんから仲山さんにはどのようなアドバイスをされましたか?

 

倉田:仲山さんのメソッドには“体感”を重視したものが含まれているのですが、紙面では伝わりづらいので、あえて削除していただきました。

また、いわゆるビジネスツール的な話も落としていただいて、素材をマンガ一本に絞っていただきました。

版面作りで意識したのは紙面から飛び出るような原画の力と相乗効果を生むために、あざやかな色を使って、フォントサイズにメリハリをつけることでした。

『ジャイアントキリング』を未読の方にも、スムーズに仲山さんのメッセージが伝わる効果を生み出したかったんです。

 

───チームビィルディングに関する本は多く出版されています。本書出版にあたり、タイトルやデザイン、売り方など、どのような工夫をされましたか?

 

倉田:「今いるメンバーで」という言葉を前面に出したいと考えていました。

企業経営者にしても中間管理職にある人にしても「“現有戦力”に不満はあるけど、簡単には補強は望めない」という悩みが共通しています。

この本なら、その悩みが解消できますよ、という端的なキーワードとして。

表紙のデザインも、この文言から目に入ってくるよう、あえて段差をつけてタイトルを組んでいます。

 

───倉田さんは、普段企画を考える際、どんなことを大事にされていますか?

 

倉田:ベースにあるのは自分自身が「読みたい」と強く思えるものであることですね。

メディアが多様化している中で、あえて書籍という形で触れたいものは何なのか?

自分の関心の背後にいるはずの読者の要求を想像しながら、具体的なイメージを練り上げています。

 

───最近読まれた本のなかで、参考になった、タイトルやつくりも含めて、影響を受けた本があれば教えてください。

 

倉田:沢木耕太郎さんの『キャパの十字架』でしょうか。

写真を多用した大胆な版面の構成は、今回の本作りで私が注意した点がみごとに覆されていて斬新でした。

すぐに参考にしたいともできるとも思っていませんが、いずれどこかでこの本の影響を受けたページ作りをするかもしれません。

 

───「一緒に本をつくってみたい」と思う著者はどんな人物ですか?

 

倉田:「本を書くこと」そのものに意欲を燃やしている人、です。

表現の手段やメディアは多様化する一方なので、その中で、あえて書籍にこだわる人ですね。

 

───倉田さんが最近手がけられた企画はどんな本ですか?

簡単にご紹介いただければと思います。

 

倉田:『ヒッグス粒子の発見』という翻訳ものの科学ノンフィクションを担当しました。

「サイエンス」誌による2012年の十大ニュースのトップに選ばれたトピックですが、理論的には、東京オリンピックが開催された1964年に予測されたものなんです。

半世紀をかけてようやく見出されるまでの壮大な物語は、まるで大河小説のよう。

現代科学ではチームによる研究が不可欠なので、仲山さんの書かれていることを思い返しながら編んでいました。

 

───最後になりますが、ビジネス書作家を目指すブログ読者のみなさまに、メッセージをお願いします。

 

倉田:本は「遅効性」のメディアなので書き手が結論を急がないことが重要だと思います。

以前に週刊誌の編集を経験した際に、「読み飛ばされるための作り込み」の重要性を体感しました。

気負わず手に取ってもらうためにも、原稿段階でとことん練り込んでみてください。

 

───倉田さん、ありがとうございました!

 

ブログをお読みの皆さんで、本にしたら絶対売れる!!という企画・原稿をお持ちでしたら、弊社あてにご応募ください。

くわしくは企画原稿検討の要項をご覧ください。検討させていただきます。

ご意見・ご感想は(info@appleseed.co.jp)までお願いいたします。

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鬼塚忠

アップルシード・エージェンシー代表。大学在学中に英国留学し、卒業後は働きながら、4年間で世界40か国を巡る。帰国後、海外の本を日本に紹介する仕事を経て、独立。「作家のエージェント」として、多くの才能を発掘している。自身でも小説を執筆し、著書に『Little DJ』『カルテット!』『花いくさ』『風の色』等がある。

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