インターネットを巡る旅

検索エンジンでの調べ物は「リアル」ではないのか?

 

先日、こちらの記事が話題になりました。

 

福岡で開催された「B Dash Camp 2016 Spring in Fukuoka」のイベント内セッション「次のビジネスを仕掛けるなら、Instagramに乗れ!」に関して、特にタレントのGENKINGさんの発言に注目した記事です。

 

焦点となっているのは「Instagramの使い方」であり、記事タイトルにもあるとおり「SEO対策がされているGoogleはリアルじゃない」というひとつの視点です。

 

「10代の若者はGoogleだけでなく、SNSでも『検索』をして情報を集めているらしい」……という話はネット上でもたびたび話題に挙がりますが、その問題ともつながる話であるように感じました。

 

そんな、ネットにおける「検索」について。

 

 

若者にとっての「リアル」とは?

まず考えてみたいのが、以下の部分。冒頭記事より抜粋させていただきます。

 

「Googleで検索すると文字が出てくるし、(検索結果は)SEO対策されている。あとはスポンサー(広告)とかが上がってきて…ネットってリアルじゃない。Instagramは検索することで言葉より画像が表示される」

「一昔前ならGoogleで検索して化粧品のランキングを見ていたが、いまは見ません。結果にウソが多いのも若い子は知っている。自分が使っている化粧品が良くなくても、(ネットの)評価がいいと『ウソだな』と思う。Instagramは個人がやっているからウソがない」

Googleは使わない、SEO対策しているから——Instagram有名人のGENKINGが語った10代の「リアル」 | TechCrunch Japan

 

要するに、Googleの検索結果は「作られたもの」であり、今の若者はそれを感覚的に“知っている”。広告収入のために制作された「アフィリエイト」の存在は当然のごとく知っており、企業の恣意的なマーケティングの雰囲気も、それとなく感じ取れる。――そのように言えそうです。

 

加えて、記事では“雑誌は作られていてリアルじゃない”という話も出ていました。メーカーや広告会社が売りたいものを、要望のとおりにライターが文章として形にし、モデルも言われるままの服を着て、それを見栄え良くカメラマンが写真に撮る――そうしてできるのが、雑誌です。

 

言うなれば、そこには「企業」の意図が多分に含まれており、「金銭」のやり取りを前提としたコンテンツ作りがなされている、と。

 

ちょっと表現は悪いですが、そのように多くの人の手垢がついてできた雑誌を読むならば、同年代のかっこいい・かわいい人のアカウントをフォローしたほうが、参考になる。そう考えているように読めました。SNSなら相手と直接交流して、オススメの情報を聞くこともできますしね。

 

だからこそ、もし情報検索をするならば、「作られた」コンテンツである雑誌や、“誰か”の意図が入っている可能性の高いGoogleの検索結果を参考にするよりも、いちユーザーの経験やオススメを一覧にして見ることのできる、InstagramやTwitterのほうが参考になるし、おもしろい。

 

そういった考え方、検索結果に重視する要素を一口に表すものが、ここで語られている「リアル」であり、そこには「一個人が示す等身大の『情報』にこそ価値がある」という主張があると言えるでしょう。

 

「リアル」の基準は、そこにいる「個人」的な「あの人」の存在?

しかし一方で、他のInstagramユーザーの意見を探してみると、次のような指摘もありました。

 

インスタに出てるのは、日常のほんとに上澄みの部分だと思うんですよ。リアルライフの中の上澄みの「きれいな部分」だけをすくって、出してるという感じ。さっき江藤さんがあげていらっしゃったような、ファッション誌と同じなんです。

”インスタジェニック”至上主義!? 平成生まれ女子たちがInstagramにハマる本当の理由

 

詳しくは記事本文を読んでいただきたいのですが、ここでは「Instagramはファッション誌と同じ」だと断言しています。同時に、「リアルライフ」という表現も話に出てはいますが、それでも当該部分だけを読むと、先ほどのGENKINGさんの意見とは異なるようにも感じますが……?

 

ここからは推論になりますが、「『個人』の生活やオススメが可視化される」という意味では、Instagramは間違いなく「リアル」なのだと思います。

 

しかし他方では――上記記事でも言われていますが、Instagramに投稿されるのは、「個人」の体験のなかでも特に「きれいな部分」が加工・編集されたうえで可視化されており、その点では「作られたもの」だという見方もできるのではないでしょうか。

 

その人の血が通った「リアル」な投稿でありながら、それはきれいに装飾されたものである。では、「リアル」でない雑誌との違いはとこにあるのかと言うと、次の話が核心を突いているように感じました。

 

雑誌とかでもそうですけど、私たちは自分が憧れてる人からものを買いたいんです。おしゃれな人とか、きれいな人とか。「誰が」勧めているかは私たちの世代にとっては、本当に重要で。

”インスタジェニック”至上主義!? 平成生まれ女子たちがInstagramにハマる本当の理由

 

重要なのは、「誰が」それを勧めているか。企業からの指示でなく、モデルさん個人のアカウントで見える日常生活のお気に入りグッズだとか、大好きな友人の服装だとか、実際に会ったことはないけれど、憧れ尊敬している人のオススメ商品だとか。

 

見た目や機能としては、雑誌と大差ないかもしれませんが、SNS上では至極「個人」的な、「あの人」のオススメを知ることができる。そういった違いこそが若者の重視しているポイントであり、それがInstagramの魅力のひとつとなっていると言えるのではないでしょうか。

 

まとめ

――とはいえ、最近はInstagramでも企業広告が当たり前となり、冒頭のGENKINGさんご自身も「仕事」としてプロモーションに携わるモデルさんでもあります。そのような立場になって、GENKINGさんはどのように「リアル」を伝えようとしているのか。

 

その答えは、記事中で語られている、“800枚撮影して、最高の1枚をアップロードする”というこだわりと、“大人っぽい”ものは若者に伝わらないという、ユーザー目線の考え方などから見て取れるように思います。仕事においても、自分の「リアル」を伝えんとする気概を感じました。

 

また、冒頭の記事について「検索」の面で改めて考えてみると、ここでは主に「ファッション」「グルメ」目線の話となっていることも、ひとつのポイントであるように思います。

 

いずれも言葉で魅力を伝えるのが難しく、最終的には「個人の好み」によってオススメも変わってくるだろう、気になる人は多いけれど、曖昧なコンテンツ。そういったジャンルにおいて、「写真」を軸としたSNSであるInstagramは、ぴったりの検索ツールであるとも言えるでしょう。

 

そして何より、インターネットとSNSの普及によって、ユーザーの数だけ「好き」や「オススメ」が可視化された現代においては、テレビや雑誌の勧めるモノを買って「みんな同じ」になる必要はなく、いくらでも自分好みのコンテンツを見つけられるような環境が整っています。

 

「自分が好きなあの人と同じ」を目指したほうが個性を出しやすいし、自分も楽しめる。なればこそ、InstagramやTwitterを検索ツールとして使う若者は少なくないのでしょうし、企業としても、そこで影響力を持つ一般ユーザーの存在を看過できなくなっていると言えますね。

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けいろー

フリーライター。ネットカルチャーと共に育ってきたゆとり世代。執筆実績として『HATSUNE MIKU EXPO 2016 Japan Tour』公式パンフレット等。

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