外的報酬のワナ
耐えられない 扶養家族の ぬるま湯に
これは働くママ向けの本を上梓するために、私が集めている「ワーキングマザーあるある川柳」のひとつです。
もう一句。
ママライター 小遣い稼ぎと 見下され(怒)
出産を機に、収入がガクッと減る女性は少なくありません。正社員だったのに、育休明けに非正規雇用に切り替えられたり、フリーランスの場合も、育児をしながらでは実働時間が確保できず、以前よりも収入が減ってしまう人は多いのです。
パートナーがいるんだから収入が減ったって大丈夫でしょう。
と世間は言うでしょう。
しかし、「稼げない自分」がどうにも許せない女性たちが少なからず存在します。
先日、私が代表を勤める『はぴきゃりアカデミー』の受講生からも、こんな相談を受けました。
「エツコさん、もはや夫は無き者と考えて収入を上げていきたいんですっ」
もちろん、ご主人はピンピンしていますし、無職でもありません(笑)。家計が苦しいわけではないはずですが、妊娠前の収入に戻りたいと焦っていました。
彼女はフリーランスで仕事をしていますが、子どもを産んで半年、営業活動をする余裕も実働時間を捻出することも難しいため、いっそのこと、会社員に戻ろことも視野に入れていると言っていました。
前出の彼女たちに共通しているのは、みんな一様に自信を無くしていて、とても傷ついていることです。これを、男女共同参画の弊害だと私は考えています。
というのも、産休や育休といった制度は定着しつつあるものの、実際のところは「男性と同じ土俵で戦えるならどうぞ」なのが男女共同参画の実情なのです。
事実、男性と同じ土俵で働いていた女性が妊娠したとき、「あいつは終わった」などと陰で言われたことのある女性をたくさん知っています。(実際は終わってないけどね)
稼げた女たちの共通点
必死に土俵にくらいついてきた多くの女性たちにとって、「報酬」とはわかりやすい評価であり、それが自信につながっています。「稼げる自分」というアイデンティティを確立してしまったことが、収入が減ると自信も無くなるというメカニズムです。そして、「稼げた女たち」の多くは世帯年収で考えられません。つまり、夫の庇護の下にいるのが耐えられないのです。
実は私もそのひとりでした。
2008年にリーマンショックが起こり、年が明けると、クライアントがゼロに。そんな矢先に妊娠発覚!
高齢出産ということもあり(当時40歳)、安静にしていなければならず、そのため営業にも行けず、ほとんど収入のない状態が続きました。貯金もないというのに、夫に泣きつくことができませんでした。
知り合いから「いったん旦那さんの扶養に入ったら?」とアドバイスされましたが、「それだけはできない!」と全力で拒否している自分がいました。
そうこうしているうちに、お金も底をつき・・・。産後というのも手伝って、プチ鬱状態に。それでも夫に言えなかった。
そんなときに聞いたのが女性経営者のKさんの話。結婚した当初、ご主人は学生だったそうで、先に就職したKさんが家計を支えていたそうです。その後、育児と仕事の両立をする中で心身を壊したときはご主人が家計を担当。再びKさんが独立すると収入も逆転。その後、娘さんが留学することになり、一生に一度のことだからと、すっぱり仕事を辞めて、娘さんについて行き・・・と、そのときどきで家計の負担を変えてきたとのこと。「夫婦っていうのは持ちつ持たれつ。それが結婚する最大のメリット」とおっしゃっていました。
ハッとしました。なんで家庭にまで土俵を持ちこんじゃったんだろう? 夫にはりあってどうすんねん? な自分に気づき、あらためて夫に頭を下げました。驚いたのは、「稼げる自分」という呪縛から解放されたら、「本当にやりたいこと」が見えたことです。これが『はぴきゃりアカデミー』という本当にやりたいことで収入が得られる新たな人生の第一歩となりました。
ワーママたちよ、今こそ、アイデンティティの再構築を!
先日、ある居酒屋で飲んでいたとき、隣に座っていたおじさまたちと意気投合し、楽しくおしゃべりをしていました。そろそろ帰ろうというとき、ひとりのおじさまが名刺をくださいました。そこには「元○○会社」と書いてありました。元・・・。会社名という鎧を着ないといられないのかと思うと、なんだか切ない気持ちになってしまいました。
収入や会社名や肩書などの外的報酬は魅力的ですがうつろいやすい。悪いことに、一度手に入れてしまうと、手放すのが怖くなります。ご褒美であったはずが、いつのまにか支配されてしまうのです。
では、どうすればよいかというと、ココロが満足できること=内的報酬を感じながら生きていくことではないでしょうか。実はそれが「稼げる力」ともなっていくものです。ちょっとした視点の転換ですね。
目指すはココロとサイフが満たされる仕事。長くなりましたので、具体的な手法は次回へと続きます。