「自然体」がフツーの働き女子を追い詰める
ある有名企業で、はじめてワーママの女性役員が誕生したという記事を読みました。
が、正直「これはまた、やっかいな人が現れた」と思ってしまいました。
「子育ても仕事も自然体で女性役員へ」というタイトルのこの記事。要約すると、「一人目の出産では産後8週間で仕事復帰。育休ははなから取るつもりなかった」「二人目のときはギリギリまで妊娠を隠して働いたが、破水しちゃったから出産予定日の前日から入院した」「朝7時に保育園に送り、夜7時にお迎え。いつも走っていた」「同期と比べて昇進や昇格が遅れたが、子育てを理由に不満を言うべきではない」「子どもが手術のときにも付き添わなかったけど、ゴメンねと思ったことはない」など、“自然体”の意味を思いっきり考えさせられる記事内容。
いや、この女性にとっては「当たり前のことをやったのみ」という意味で自然体なのでしょう。しかし、この記事を読んで、「働くママでも役員になれる時代が来たんだね!」などと手放しに喜ぶ女性はいないでしょう。むしろ、「そこまでしたくないかも・・・」と、ワーママの士気が下がったり、ますます少子化が進んだらどうするんでしょうか?
それで思い出したのが、朋友であり、最近出版した『愛は技術』がバカ売れしているジョヤンテ代表の川崎貴子さんのエピソード。彼女、実はめちゃくちゃ料理が上手なんですよ。味も盛り付けもプロ級。でも、他の女社長たちがせっせと料理という名の「作品」をブログにアップして「デキる自分」をアピールする中、娘のためにつくったお弁当の「謎の生命体にしか見えないタコさんウインナー」を投稿するなど、あえて「ゆるキャラ」を演出していました。(40代になり解禁されましたが)これは私の勝手な見解ですが、完璧な美貌と肩書きを兼ね備えた上にお料理上手ときたら、働く女性たちを追い詰めてしまうことにもなりかねない。他にも、私生活ではまったくモテなかったことを吐露しており(『愛は技術』参照・笑)、わざわざ自ら隙をつくっているのは、後進である働く妹たちへの愛、なのではないでしょうか。
腹をチラ見せするのもスキルのうち
仕事を持つ女性たちの多くは、人に弱みを見せるのが苦手です。「弱みって何?」という一部の超優秀な人を除けば、「デキない奴と思われたくない」というプライドだったり、母親世代を反面教師にした頼る女への嫌悪感など、様々な要因があります。
私自身、20代後半ではじめてプレイングマネージャーになったときは、部下にバカにされまいと戦々恐々。なので、経営から降りてきた数字が大きすぎて不安なときも、経営方針が変わり、私の部署が廃部の危機に陥ったときも、動揺を悟られないよう必死に取り繕っていました。が、その代償は大きかった。過度のプレッシャーと睡眠不足が続いたことで心身症を発症してしまったのです。
でも、「頑張ってきたのになんでこうなるの!!!!」と、すべてを放り出したくなり、部下に「もう無理!」と、はじめて弱音を吐いたことで事態は一変。登社拒否して家に引きこもっていた私に、過去最高売上を達成したという知らせが届いたのでした。
この一件で学習したのは、「人は頼られるのが案外好き」ということ。そして、相手のやる気スイッチを押すことにもつながるということです。逆に言えば、完璧であればあるほど、相手の成長の機会を奪うことにもなりかねません。
3人の子持ちのワーママもこんなことを言っていました。
「もうダメ・・・ってヘナヘナってしたら、息子と夫の動きが劇的に変わった」と。
女はみんな女優。ワーママのみなさまにおかれましては、ぜひ旦那さまやお子さんの前で一芝居うってみてはいかがでしょうか?
最後に・・・。誰にも知られたくないようなこっぱずかしい失敗の数々、きっと誰にでもあると思います。それを自分の胸の中にしまっておけばお荷物なだけですが、思い切ってシェアすることで、必ず誰かの気づきにつながります。そうすると、失敗に意味が出てくるんですね。お荷物だった経験が糧に変わると、自己肯定感も高まりますよ!
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