Webライターになりたくて。

バズるコンテンツは「煩悩」から生まれる。僧侶ライターに聞く、PVが伸びる記事作りの極意

Webライターとして仕事するうえで気になるものの一つ、それは「PV(ページビュー)」。ドカンとPVを稼ぐ記事は、どうしたら書けるのでしょうか。今回のインタビュー相手は、僧侶ライターの稲田ズイキさん。「煩悩」をテーマにしたヒット記事の数々を生み出す稲田さんに、コンテンツ作りへの考え方を聞きました。

(文/小村トリコ)

  • 稲田ズイキさん

僧侶、編集・ライター、イベンター。デジタルエージェンシーでの勤務を経て、2018年春に独立。現在は浄土宗月仲山称名寺の副住職を務めながら、記事執筆やイベント企画を行う。仏教マガジン「フリースタイルな僧侶たち」Web編集長。

 

 

日常に「違和感」を落として読者の目をとめる

───稲田さんがライティングを始めたきっかけは何ですか?

 

稲田ズイキさん(以下、敬称略):もともとライターになるつもりはなく、自分のブログで細々と記事を書いていました。初めて「バズ」を体験したのは、大学院生のときに書いた「モーニング娘。の歌詞を仏教的視点から考える」という記事です。1日20アクセス弱だったブログが、急に5万くらいまで伸びるようになって。広まった結果、JASRACから訴えられて記事は削除したのですが(笑)。

 

───そこからWebコンテンツ制作に注力するようになったのですね。

 

稲田:その後、寺メディアやカルチャーメディアを立ち上げました。今はいくつかの媒体で寄稿や編集をしています。最近書いたもので一番バズったのは、MOOOM(モーム)に寄稿した「女体の代わりに野菜でグラビアを撮った」記事ですね。八百屋で買った普通の野菜をエロティックに撮影したんです。公開1週間で70万近くのPVを記録しました。

稲田さんの所属する寺で開催されたお寺ミュージカル映画祭「テ・ラ・ランド」は、同じくネット上で大きな話題を呼んだ(称名寺ブログ「寺motto」より)

 

───どうしたらそんな発想が出るのですか?

 

稲田:普段から「変」について考えているからでしょうか。違和感のあるものを見たときって、ちょっとテンションが上がりますよね。ぼくがコンテンツを作るときは、人と同じものや、人が求めるものをそのまま出さないように気をつけています。

 

───普段から「変」を考える、とは?

 

稲田:たとえば電車に一人で乗っているとき、「ここでいきなりぼくが変顔をしたら、どうなるだろう」とか妄想するんですよ。実際に数秒間だけ変顔をすることもあります。

 

───変人だ(笑)。稲田さんにとって「変」とは何ですか。

 

稲田:お笑いでいうと「フリ」と「オチ」みたいなものでしょうか。フリは日常です。フリが普通だからこそオチが生きてきます。だから、電車というごく普通の当たり前の空間に燃えてしまうんです(笑)。目立つべきでない場所で目立つのが好きなんですよ。

 

───髪型をアフロにしているのもそのため?

 

稲田:モチーフは五劫思惟阿弥陀仏(ごこうしゆいあみだぶつ)です。長いあいだ悩み抜いた結果、螺髪(らほつ)がアフロのように爆発してしまったという仏様で、そのストーリーに自分と重なるところを感じて。パーマ屋さんで「この仏像みたいにしてください」と頼んだらこうなりました。ぼく自身はすごく真剣なんだけど、見た目はアフロの僧侶だっていう。このズレが面白いなと思って。

五劫思惟阿弥陀仏(提供:京都フリー写真素材)

卒乳は小学1年生。自分を知って見えた現実

───そうやって「変」を追い求めるのは昔からですか?

 

稲田:ぼく、小1の頃まで母乳を飲んでいたんですね。食後のデザートは乳を吸うことでした。母はおおらかな人だったので「飲みたいだけ飲んだらいいのよ」という感じで。そのせいか、自我の芽生えが異常に遅かったんです。自分の市場価値というものを意識したのは高校に入ってから。生まれて初めて、鏡の前でまじまじと自分の顔を見たんです。衝撃でした。

 

───どんな?

 

稲田:自分と他者との違いが、その時にドドドーッと押し寄せてきたんです。普通は成長の中で少しずつ認識していくじゃないですか。自分がイケメンかブサイクか、運動できるか、といった学校内でのヒエラルキー。それで気付きました。自分はブサイクだし、勉強も運動も苦手で、何もできない。コンプレックスのかたまりになって、死にたいくらい落ち込みました。

 

───どうやって立ち直ったのですか。

 

稲田:「変に振り切ること」が一つの答えでした。昔から友達は多いほうだったので、せめてぼくの周りに集まってくれる友人たちを、ずっと楽しませられる人間でありたいと思って。それから、誰も見たことがない新しいものを作り出したいと思うようになりました。

トークイベント「猥談オークション」にて。稲田さんの代表作の一つ「ルギアをオカズにした」記事のエピソードを語る

カメラのフィルターを交換するように

 

───新しいもの、とはどんなものですか。

 

稲田:組み合わせですね。今までにバズったぼくのコンテンツは全部そうだと思います。アイドルと仏教、AIと釈迦、野菜とグラビア、など。離れた2つのワードをいかに「こじつけ」できるかが重要です。

 

───新しさを生む分、共感を呼ぶのが難しそうですね。

 

稲田:意識しているのは、全方位共感ではなく、ごく一部の人に共感してもらえるコンテンツです。聞いた瞬間に、「うーん、わかるようなわからんような……」と思わせて、全部味わった瞬間に「俺はわかったぞ!」と言える体験の方が、心を動かすとぼくは思っています。

企画中の寺ライブ。「地下アイドル」が「地蔵オタク」の前でパフォーマンスを行う(稲田さんのnoteより)

 

───稲田さんご自身に対しても、「僧侶」が「煩悩」の記事を書く、というのは気になる組み合わせですよね。僧侶なのに煩悩って。

 

稲田:いろんな煩悩があるんですよ。ぼくの言う煩悩というのは、日常を違ったフィルターで見てみることです。野菜だって普通はエロく見えないじゃないですか。でも、フィルターを替えたら見え方が変わる。それはぼくの主観や想像の世界だけど、そこに共感ポイントがあれば、個人の煩悩に引きずり込める。そういう体験をつくりたいんです。

 

───自分のフィルターを読者と共有する感覚なんですね。

 

稲田:仏教では「あるがままに物事を見なさい」と言われますが、「あるがまま」って正直意味わからないじゃないですか。なので、まずは煩悩のフィルターを作って、世界の見方をたくさん作る。これがぼくの歩みたい「煩悩×僧侶」の道ですね。

小村トリコ

小村トリコ

シアトルの日本語新聞『SoySource』編集長を務めたのち帰国し、現在は東京で活動中。ライフワークは「人の話を聞く」こと。コトリ二羽とニンゲンのさんにん暮らし。

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